今晩は。

先ほど、インバル指揮都響の演奏会を聴いて参りました。

2010年6月19日(土) 18:20開場 19:00開演
東京都交響楽団第701回定期演奏会 Bシリーズ
@サントリーホール


マーラー:交響曲第2番「復活」

ソプラノ:ノエミ・ナーデルマン
メゾソプラノ:イリス・フェルミリオン
合唱:二期会合唱団(合唱指揮:長田雅人)
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉
指揮:エリアフ・インバル


いやあぁ・・・
マーラー、そして大編成オーケストラを聴く喜びに満たされた演奏会でした。

総論としては、かなり独特なマーラーでした。
これがインバルのマーラーか!と、感動とともに驚嘆しました。

私は、3月に3番(31日の方、2009年度ベスト・コンサートに輝きました)を聴きました。
本当に素晴らしい演奏で、ぐうの音も出ませんでしたが、今考えると、あれは彼にしてはかなりオーソドックスな解釈だったのだと思います。
曲の違いによるところも大きいでしょうが、3番ではゆっくりとしたテンポで大らかに曲の表情を描いていたのに対し、今回の2番「復活」は、相当に大胆なテンポ・音量の変化をもって、曲の「死→復活」という観点にフォーカスしていたように思います。
インバルの頭の中では、第1~4楽章はじっくりやって、第5楽章で一気に爆発という、構成が組まれていたのかもしれません。

18時20分にホールに入ります。会場には、音楽評論家の東条氏もいらしていました。
あれ?この前までウィーンにいらしたんですよね?忙しい方です。
これから創造されるであろう名演を、皆が待ち焦がれていました。

編成は、マーラーですので、当然巨大です。弦楽は6プルト。
バンダを含めると、トランペット・ホルンはそれぞれ約10本ずつ用意されていました。
さらに、ティンパニは二対。他にもタムタム、バスドラム、シンバル(重ね合わせるものとバチで叩くものの二種類)など、無数の打楽器群。そして、それに合唱とパイプオルガンが加わります。

3番もこういった感じでしたが、また少し違った編成で、ステージに目を奪われます。
椅子だけでも興奮しますが、いざ団員の方がいらっしゃると「うわ~」という感じですね。

やがて、いつもの黒いスーツを身に纏ったインバルが登場、大きな拍手。

―鋭くタクトが振り下ろされ、ヴァイオリンのトレモロにより第1楽章が開始されます。
この後に続く、聴きどころの低弦は、思いの他かなり整然としており、理知的で、なおかつ緊張感がありました。

大抵の指揮者はここを荒々しく弾かせ、ウケをとる(?)ものですが、インバルほど円熟した指揮者ともなると、そんなことをしないのですね。

この楽章はやや遅めのテンポで進みます。そのお陰で、全管弦楽の突進は重戦車のような迫力を伴い、また弦楽合奏は血の滲むような、生々しい響きを生みだしました。
また、楽章中度々現れる「静寂からの蠢き」も独特のテンポ処理をしていました。
最も頻繁に聴かれたのは、オーケストラの全休止。
相当数あったように思います。効果を発揮しているかというと、やや微妙かもしれません。それほど弊害はないですが。
また、弦楽の、楽園的で印象的な旋律が随所にありますが、そこはかなりテンポを落としていました。復活後の来世への美しい憧れを強く強調しているように思えました。
さらに、低弦による地底からの蠢きのような箇所(楽曲後半です)も、相当遅いテンポで始め、ホルンなど楽器が増えるにつれて徐々に加速していくという、離れ業を達成していました(都響のコンバス拍手!!)。

続く第2楽章も、ゆったりとしたテンポによる演奏。
都響の弦楽が、甘いポルタメントを伴って響きます。後半のピツィカートも音量に区別をしっかりつけていました。
フルートの悲しく吹く風のような旋律も感情豊か。

ここで、オケははけずにインバルだけが退場し、しばし休息。
合唱・ソリスト2人が入場します。どちらもP席に配置され、ソリストの上に合唱団がいます。

そして、第3楽章。ティンパニの乱打。大き目の音で始まりました。
ステージ左上には、ムチのような「パンパン」という音を出す楽器(名前をなんというのでしょう)を演奏する奏者が見えます。
インバルも、小柄な体を上下にゆすってリズムをとっています。
オーボエの、田舎の涼風のようなのどかな旋律が心をくすぐったかと思えば、トランペットの嘲笑、輝かしいファンファーレと、ひっきりなしに曲想が入れ替わる楽章です。ファンファーレは何度も再現されるのですが、そのうちに爆発し、第5楽章冒頭を予言します。
こういった場面わけも、インバルはしっかり行っているようです。
タクトの振り方一つでホルンの音色が変わるのを目の当たりにしました。

また、終結近くの全弦楽の切羽詰まった、息苦しい響きも見事。

アタッカで第4楽章へ。
第3楽章の終わりごろから、アルトにスポットが当たっています。
フェルミリオンは、愁いのある声で素晴らしい。3月の3番の時より、明らかに良いです。
ただ、もう少し音量に強弱があると完璧なのですが。
この楽章では伴奏の木管が大活躍です。クラリネットの不安げな音色など最高!

そして、やはりアタッカで第5楽章へ!!
いきなりテンポアップ。これはびっくり。
冒頭のドカンとくる打楽器の後の、バスの刻みのスピードがむちゃくちゃ速い。
運指が大変でしょう。
その後はもうツボにはまりまくりの大演奏でしたが、少し独特だな、と思った点がいくつかあります。

一.スネアドラムをはじめとする打楽器の総クレッシェンドがやけに短い。
ほとんどの指揮者はかなりじっくりやりますよね?
ちなみに、その後の行進曲は弦楽中心部分をテンポ落としてました。アバドなどと同じ解釈ですね。大好きです。

一.フィナーレの壮大な復活動機の部分で、トランペットのベル上げをしてました。
あれは皆さんされるのでしょうか?この前、インバル指揮フィルハーモニアの「巨人」でもフィナーレで同じことをしていました。
音が飛んで、相当効果的なのは間違いないと思いますが、楽譜にはどう記載されているのでしょうか?どなたかご教示ください。


演奏者について少し。

合唱は、バスがもう少し多くて良いと思いますが、表現は流石二期会、でした。
ソリストは、メゾの陰りのある声とソプラノの開放的な声の対比が楽しい。

そして何より都響!!
ほんっとに素晴らしい!
エキストラとか関係なく、このステージに載られていた皆さん、全員素晴らしかった。
弦楽は間違い無く、日本一。特に今回は、矢部コンマス+山本フォアシュピーラーという最高の布陣。
特に矢部さんの強力なリードがパート内にきちんと伝わっているので、生物のようにうねる第1Vnは見ていてカッコいい。

広田さんをはじめ、木管も繊細。

これで金管が最強奏でも乾いた音色にならず、また全管弦楽の再弱音が濡れたような質感の音になったら、間違いなく世界最高のマーラーオケです。

インバルとの共同作業も順調で、今や彼らはインバルの手足といえるでしょう。
3番の時より明らかにオケの食い付きが良い。


とにかく、本当に感動的な「復活」だった。

3月の3番、ブル8、チャイ4と併せて、早くCD化して下さい、EXTONさん!
(追記:CD化は11月中旬の見込み。)