2010年11月17日(水) 18:00開場 18:45開演 @愛知県芸術劇場 コンサートホール
第28回名古屋クラシックフェスティバル


管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮:マリス・ヤンソンス


ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番
ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」
---休憩(20分)---
チャイコフスキー:交響曲第4番
~アンコール~
チャイコフスキー:バレエ組曲「眠れる森の美女」より パ・ダクション-アダージョ


まず公演とは関係の無いことですが、
首席ヴィオラの波木井賢さんがホール前でふっつ~に携帯で話してらっしゃいました。
あまりに普通すぎてびっくり・・・

メータ/イスラエル・フィルに引き続き、海外オケの公演。
こう連続的に素晴らしい演奏を聴いていると、国内オケでは満足出来なくなりそうで怖いです・・・あの都響も。

ウィーン・フィル、イスラエル・フィルに大いに感動して、「いや~、世界トップクラスはやはり凄い」と感じ入っていた今日この頃だったのですが、今回のコンセルトヘボウの公演には完全に度肝を抜かれましたね。

・・・とにかく、完璧なオーケストラ。昨夜の演奏を録音していたとしたら、すぐに発売可能だ思います。

弦、木管、金管、打楽器・・・比類しがたい技量と音色。
あのベルリン・フィルでも、ややもすれば音色が汚くなりがちな楽器であるテューバすら美しい。
これほど美しいテューバを私は聴いた事がありません。トロンボーンとの音量バランスの面でも完璧。

また、ヤンソンスの人気も相変わらず凄いですね。演奏前にブラヴォー飛んでましたよ。

まずはベートーヴェンの序曲ですが、本当に素晴らしかったですよ。音楽の推進力といった点では、これこそが今日随一の出来だったと言えるでしょう。
「名門」と呼ばれる団体でも、エンジンがかかるのが遅い所は結構ありますが(ウィーン・フィルなど、気に入らない指揮者の時はもう・・・遅い遅い!)、コンセルトヘボウ管、第1曲から気合入りまくりです。
決して怒号せず、威風堂々とした演奏で、硬めのマレットで叩かれたティンパニがいい味出してました。
特に、例の主題がヴァイオリンのトレモロで現れる箇所や、展開部のフルートの難所の、包み込まれるような温かさは、このオケの伝統がものを言っていましたね・・・絶美。
また、トランペットのソロの前で音楽が休止するあたりのヤンソンスの指揮が、「如何にも」といった感じで楽しかった。

この曲が終了した時点でボルテージは俄然上がります。

さて、お次はヤナーチェクの代表作「タラス・ブーリバ」。残念ながら演奏機会は多くないよう。
チェコ国民楽派の中でも、モラヴィアの生んだ大作曲家、レオシュ・ヤナーチェクは一味も二味も違いますぜ。
何といっても、「発話旋律」の研究に力を注いだ彼の音楽は、チェコ語の抑揚を再現していると言われています。つまり、チェコ語(難しい!)が分からない私(達??)にとっては難解に感じられることも多いです。
しかし、以前「ブロウチェク氏の旅行」(日本初演)を聴いた時には、確かにやや難解な外面の中に脈々と流れるヒューマニズムには、他のボヘミアン・コンポーザー達にある種通じるものを感じましたので、「今回も楽しめるはず!」と、期待していました。

・・・予想通りの演奏。
結構ソロ箇所の多い曲だけに、ソリスト揃いのこのオケにはぴったりでしたね。安定感抜群。
また、第1曲冒頭では、トゥッティ(チューブラーベルの連打も印象的)と直後にオルガンの弱音の対比が美しい。
この箇所はもう耽美的で・・・うっとり。ちなみにポジティヴオルガンが使用され、音はホール据付のオルガンから出ていました。やや薄いですが、いい音色でしたよ。

第2曲ではトロンボーンがバシバシとリズムを決め、爽快!思わず「ティル」を思わせる最後のクラリネットソロもあり得ないウマさ。何だかこの一連の箇所は「幻想」の4楽章っぽいですね。後、ハープもお見事!
第3曲では、再現部の前のティンパニの強打が完璧かつ豪壮でポイント高かったです。

そしてその後は捕縛されたタラス・ブーリバの予言ですが、パイプオルガンの重厚な響きも加わり、如何にもボヘミアンな、ロマンティックな旋律をヴァイオリンが高らかに歌い上げます。
ちなみに、今でこそ「ボヘミアン」と思えますが、最初この箇所を聴いた時は「中国の二胡っぽい?」と思ってしまいました(爆)。ヴァイオリン・ソロの後は、徐々に音量を上げて大団円。ノイマン盤は最後のティンパニの一打のほんの少ぉし後に切り上げていますが、ヤンソンスはティンパニが打たれると同時に振り切りました。
ブラヴォー。
ヤンソンスは終始楽譜を見ていたようで、彼の個性はあまり感じられず。純音楽的だったということかしら?
彼のレパートリーは相当広いはずですが、流石にヤナーチェクまで自家薬籠、というわけにはいかないですよね。
(ちなみに、予習したディスクはノイマン/チェコ・フィルのもの)
演奏会を後にした聴衆で、この曲が好きになった方も結構おられるんじゃないかと勝手に推測します。

さぁて、休憩後はチャイコフスキーの第4交響曲。
これこそ、ヤンソンスの自家薬籠のレパートリーですよ。楽譜はおいてなかった・・・かな。
かつてムラヴィンスキーの代役としてレニングラード・フィル日本公演でこの曲を振っていましたが、その時(86年)と比べると、段違いに風格があります。自身満々。
冒頭のホルンの斉奏はどうやって振るのだろうか、と見ていましたが、彼の両手は休符を早めに切り上げて次の音符へと移行していました。(テューバに感動したのはこの後に金管全部が加わって吹奏するところ)
この楽章では、ロシアの凍てついた大地を思わせる低弦の重厚な響きが印象的。

第2楽章では、冒頭のオーボエ・ソロが完璧なのは勿論(顔を真っ赤にしていましたが、出てくる音は余裕そう・・・降参です)、ファゴットによるややユーモラスな第2主題の提示(3月にインバル/都響の同曲の演奏は、グロテスクになりかけでしたが)の後、弦がトゥッティで同主題を奏でますが、ここは本当に痺れました。寥々とせず、どこまでもぶ厚い響きの嘆き節には、鳥肌が立ちました。しつこいようですが、何というパワーのオケでしょうか。

第3楽章では、ヤンソンスの芸達者ぶりが笑える。指揮棒は持たず、手で指揮しましたが、手ですら殆ど指示をせず、クレシェンドする楽器の方に体をゆっくりと傾けたり、ダンスするような仕草もありました。
ただ、終盤の管と弦の掛け合いはきちんと指揮棒で指示していました。転換が早い指揮者ですね。
インバルもこの楽章ではユーモラスでしたから、指揮者はこの楽章で踊る(?)のが好きなのかもしれません。

そして、アタッカで終楽章・・・と思いましたが違った。ここは絶対アタッカでやって欲しいなぁ・・・。
フィナーレは大迫力の演奏。管楽器をやたらと咆哮させることなく、弦楽の刻みを正確に打ち出して構築性豊かに仕上げていました。ティンパニ・シンバル・バスドラの連携とこれまた手本のような音色も最高。
この楽章でも、ヤンソンスは目立った指示は少なかったですが、「運命の動機」回帰後はややアッチェレンランドをかけ、最後は程よく伸ばして堂々たる終結。
今日の聴衆はフラブラなしで、かつ反応も至極熱狂的で良かった。またもやブラヴォー連発。ノドが・・・(笑)

熱狂的なカーテンコールの後、アンコールはチャイコフスキー「眠れる森の美女」よりアダージョ。
冒頭のハープの煌きもさることながら、弦楽器に綿々と歌わせ、まさにヤンソンスのやりたい放題の演奏。
ロシア~ンな雰囲気がホールに満ち溢れました。
楽員さんが楽譜をめくっていたので、もう一曲用意はあったようですが、ヤンソンスとコンマスが何やら話していましたので、相談の上やらないことにしたのでしょう(東京公演でも全く同じだったよう)。
それでもなお聴衆は拍手を送り続けました。終いにはヤンソンスがコンマス・弦の首席と固く握手を交わし、立ち上がった楽員もヤンソンスに拍手を送るという幸福な場面も。このコンビの信頼の強さをうかがわせます。

そして、やっとお開きになり、楽屋口に走ります。前回のメータの際はサインを頂けなかったので、少し不安だったのですが、待つこと小一時間、ややお疲れのご様子でしたが、マエストロは出てきてくださいました。
プログラムにサインを頂戴しましたよ。
20101117_002

再来年は、さらにコアなプログラムを携えて、また来日して頂きたいです。
う~ん、シューマンの2番とか、ショスタコの10番とか・・・メジャーだけどザ・グレイトなんていうのもいいかも。
名古屋でマラ6なんて聴けたらもう僥倖ですね。

良い演奏会でした。