2010年11月6日(土) 14:15開場 15:00開演 @兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

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開館5周年記念事業
Daiwa House 55th Anniversary Special
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ジョルジュ・プレートル

シューベルト:交響曲第2番
---休憩(20分)---
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
~アンコール~
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番
ヨハン・シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ


聴けて、本当に良かった。
老巨匠の勇姿を、しかと目に焼き付けてまいりました。

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会場である兵庫県立芸術文化センターは、初体験のホール。
2005年オープンで、このウィーン・フィル公演が開館5周年事業ということから分かるとおり、
非常に清潔感あふれる、真新しいホールです。

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ホールには2006年、昨年来日した際のウィーン・フィルのパネルが掲示されていました。
アーノンクールのブル5と、メータのヘルデンレーベンですね。

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相変わらず、コンマスを先頭に入場してきました。
参考までに、確認できた今年の主要来日メンバーを記しておきます。
コンマス:キュッヒル
フォアシュピーラー:シュトイデ
チェロ:ヴァルガ、バルトロメイ
コントラバス:マイヤー
フルート:ミュラー
クラリネット:オッテンザマー息子
ティンパニ:ミッターマイヤー
他は知りません(笑)

さて、前プロはシューベルトの交響曲第2番。
―まず、第1音が鳴った瞬間、感動しました。
ああ、これがウィーンの音なのか、と。
神々しく、厚みある、ふんわりとした音色。
明らかに、他のオケとは違いました。

プレートルは勿論全曲暗譜ですが、日本公演の初日ということで少し緊張していたのか、
初めのうちは神経質そうに拍を小刻みに取っていました。
やがて、ウィーン・フィル(初期作品にしては大きな編成!)の美音を最大限に活かし、
この可愛らしい佳曲を愛でる様に、しかし豊麗に響かせるようになっていきました。
シューベルトの2番を予習なしで、このコンサートで初めて聴く人は、
まさか18歳の作品とは思えないでしょうねぇ。

最も素晴らしかったのは第1楽章。
序奏部~主要主題の登場までの、これ以上ないほど滑らかで、緊密な弦のアンサンブル。
包み込まれるような、温かな空気感は、このオケにしか創出できないでしょう。
内声部の響きも充実しており、プレートルも弦と管楽器のバランスや受け渡しを、要所要所で指示していました。
ちなみに、緩徐楽章では、プレートルはコンマスの譜面台にタクトをしまい、両手で指揮しました。
これはメインのベートーヴェンでも同様です。
快速テンポの一筆書きで描かれた第4楽章も、愉しさの極み。

休憩後、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」
プレートルは、この曲をR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」との組み合わせ(!)で、
ウィーン・フィルと昨秋演奏していますので、手馴れたものだったのでしょう。
2管編成・16型でしたが、本当なら8名いるはずのコントラバスが7名・・・。
一番辛いのは、本国にいらっしゃるご家族でしょう。ご冥福をお祈りいたします。

全曲を通して重厚なスタイルで、第1楽章のトランペットも最後まで吹かせていました。
勿論、プレートル・マジックが至る所に仕掛けられているのですけどね。

冒頭の2つの和音は、思いのほか壮麗に始まりました。
「ザン・ザン」ではなく、「ジャーン・ジャーン」といった感じです。
しかしそれも束の間、主部に入るとテンポを上げ、一気呵成に突き進んでいきます。
途中、ホルンがソロでほんの少しつまづいたほか、ウィーン・フィルはまだ少し硬い感じがしました。

第2楽章の葬送行進曲は、前楽章とテンポはほとんど変りません。
弦楽の美しさに本当に聴き惚れましたが、最強奏の壮絶さは、流石に劇場人プレートルといったところでしょうか。
オーボエのソロ(良かった!)を初め、木管も切実な音色で訴えかけます。

続いて、第3楽章。オケは、第2楽章で完全に本調子を取り戻したようで、それを見抜いてかプレートルも拍は取らず、音楽の流れやディテールを全身で激しく表示するいつものスタイルになっていったように見えました。
壮絶な主部に続き、トリオ(中間部)のホルン三重奏では、4本の(楽譜指定では3本ですが)
ウィンナ・ホルンの高らかな吹奏に体を任せました。
プレートルはここで大きくテンポを落とし、音色を存分に味合わせてくれました。これぞ最高の耳の贅沢・・・。

雪崩のようにスケルツォは通り過ぎ、楽譜をすばやくめくったかと思うと、アタッカでフィナーレへ。
重厚かつ奔流のような勢いで、序奏が激しく奏された後は、ピツィカートの箇所ですが、
ここにもプレートルは魔法を仕掛けました。ピツィカートに濃厚な表情づけをしていたのです。
チャイコフスキーの4番の第3楽章もそうですが、どうもピツィカート奏法にはチャーミングな効果があるようで、
プレートルはそれを最大限に活かしたという所でしょうか?人間的で、本当に愉しかった。
その後も、テンポの緩急を大きくつけて、情熱的な演奏を繰り広げましたが、
作品を演奏が超えてしまうことはなく、下品とのギリギリのバランスで名演を産み出すプレートルを見て、これぞ現代最高、いや史上最高の巨匠だと確信。曲の最後に近くなると、体中をぶんぶんと振り回し、ものすごいエネルギーを撒き散らしながら、ウィーン・フィルのテンションも最大限に煽り立てました。
そして、いよいよやって来たコーダでは今まで以上に大きくブレーキをかけ、ホルンを思いっきり強調し、最後は弦を豊満に鳴らして、威風堂々と曲を閉じました。

残響がホールに鳴り渡った瞬間、嵐のような大拍手とブラヴォー。
プレートルは指揮台から一歩下がり、終始笑顔で盛んに奏者を労っていました。
数回目のカーテンコールの後、プレートルと一緒にトロンボーン奏者・打楽器奏者が舞台に登場、
プレートルお得意の、ブラームス「ハンガリー舞曲第1番」が始まりました。
これはもう、完全にプレートルのやりたい放題の音楽で、先ほどの「英雄」以上にテンポの変化は自由自在。
その湧き上がる情熱に、ウィーン・フィルも必死で反応していましたが、弦は所々で崩壊しかけていました(笑)!
やがて、ますますヒートアップした会場に再びプレートルは登場し、シュトラウス2世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。
(ちなみに、ここで初めてトロンボーン登場。音色がぐっと厚みを増します)
2008年のニューイヤーでも披露したこの曲、もう何も書くことはありません。ただただ、黄金の音色。
今、その2008年のDVDの名演を聴いて、過ぎ去った時を懐かしんでいます。


プレートル・・・本当に凄かった。こんな極東の島国へ、はるばるやって来てくれて、本当にありがとう。
終演後の長大な出待ちの列にも、嬉々と対応してくださった。巨匠の至芸に、皆酔いしれていましたよ。
やはり、とても86歳とは思えぬ身のこなしの軽さ。これからも、健康を大事にしつつ、ずっと活躍して、
ニューイヤーも振って欲しいし、願うことなら、このコンビでまた来日して欲しいな。

空前絶後の、草書体の「英雄」でしたが、こんな演奏が出来るのは、絶対にプレートルだけです。
繰り返しになりますが、本当に、本当に聴けてよかった。
今回の演奏会に行かせて下さった両親、そして協力者の方々にも深く感謝いたします。
また同行した友人も、十二分に楽しんでいたようでした。めでたしめでたし。

10日のサントリー公演は、NHKが収録しないのが本当に惜しまれますが、きっと残響も相俟って名演になるでしょうね。行かれる方、楽しんでください。