2010年11月9日(火) 18:00開場 18:45開演 @愛知県芸術劇場 コンサートホール
第28回名古屋クラシックフェスティバル


管弦楽:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ズービン・メータ


ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
---休憩(20分)---
マーラー:交響曲第1番「巨人」
~アンコール~
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「雷鳴と稲妻」


演奏者、聴衆の双方にとって、超重量級プログラムですが、
流石はメータ&イスラエル・フィル、充実した演奏を披露してくれました。

ハルサイ&巨人、どちらにも共通して言えることは、メータの指揮の流れの良さです。
メータは、細部にはあまりこだわらず、大河の奔流のごとく音楽を畳み込んでゆくスタイルで
一貫していますが、近年の彼の円熟によって、そのスケールはさらに増しており、
ピリオド奏法が叫ばれて久しい近年では珍しいほどの、聴き応えのある音楽を聴かせると言われます。
今回の演奏で、僕もその思いを確かにした次第です。


会場に入ると、大勢の演奏者がステージ上で練習をしており、かなり賑やか。
編成は、5管編成の巨大オーケストラで、2セット(高音のピッコロ・ティンパニ含む)のティンパニや大・小2種類のタムタム(銅鑼)など、多くの打楽器が並びます。
なお、ギロ等、数種類の打楽器は日本人の第2ティンパニ奏者が担当していました。経費節約でしょうか(笑)
メンバー表にもきちんと載っておられます。

そして、メータは指揮台に立つと、あっけなく『序奏』を振り始めました。
いきなりの難所であるファゴット・ソロは、超ヴィルトゥオーゾという程ではありませんが、巧い。
各楽器の掛け合いには、尋常でない雰囲気のロシアン・エロスを求めたくなるところですが、
少し当たり前すぎた感があります。もっとも、破綻は全くないのですが。
『春の兆しと乙女たちの踊り』に入ると、重心の低い弦楽器がザッザッザッ・・・と入ります。
リズムのメリハリは十分に付けられていますが、非常に余裕そうで、気品すら漂っていました。
そして、曲の凶暴化とともに、バスドラム・第1ティンパニが活躍します。
このオーケストラ、弦だけでなく、打楽器も凄まじい!!
変拍子のリズムを、正確無比にバシバシと叩き込んでくる上、
音色も硬めで、完璧な演奏でした。ブラヴォー!!
(ちなみに、バスドラのお爺さんが、楽器を傾けたり、青い布を被せたりと、忙しなかったです。
ホルンを初めとする金管群も、最強奏ではやや混濁も聴こえたとはいえ、
ブリリアントな音色で、素晴らしい吹奏でした。
第1部は中庸のテンポで、それほど噛み付くことなく終了。

第2部の、『いけにえの賛美』までの、静寂を生かした音作りは出色でした。
ミュートを付けた金管の、妖しいソロもいいのですが、
なんと言っても「乙女たちの神秘的な集い」の弦楽器のエロさ!
恐らくヴィオラだったかと思いますが、本当に頭がクラクラとするほど官能的でした。
また、驚愕したのがピツィカートの弱音!!
チェロがピツィカートでリズムを刻みデクレシェンドする箇所(『祖先の呼び出し』かな??)
の、聴こえるか聴こえないかの限界の音量でした・・・あの弱音は、確かな技量の証拠でしょう。感服いたしました。
さて、有名な「ス・ト・ラ・ヴィ・ン・ス・キ・ー・の・ば・か」の連打の後のアクロバティックな踊りも、
彼らは難なくこなして(『いるように見える』)いきます。
打楽器の乱打もますます激しくなっていき、視覚的にも圧倒される中、
最後のピッコロの断末魔の叫びの後、メータは一瞬間をおいて曲を結びました。

この曲は完全に彼らの手の内に収まっているのでしょう、見事に彫琢された、シンフォニックな解釈。
ただ、演奏中にトランペット奏者の一人がミュートを落とすというハプニングあり。
こちらのブログで触れられているように、以前もこういうことがあったようですから、困ったものです・・・。

さて、休憩を挟んでマーラーの「巨人」。
ストラヴィンスキーでもオケは結構鳴っていましたから、果たしてスタミナが持つんだろうか・・・と
心配でしたが、流石はイスラエル・フィル。前プロを凌駕する名演を聴かせてくれました。
(ちなみに、「巨人」は初ナマです)
冒頭のフラジョレットは残念ながらイマイチでしたが、音楽が動き出すともうたまりません。
クラリネットのカッコウ動機、トランペットのバンダの技巧、チェロが導く『朝の野辺を歩けば』の旋律・・・
理想的な演奏でした。
曲が進むにつれて自然な感興が沸き起こり、クライマックスのホルンの咆哮も凄かった!
第2楽章として挿入された「花の章」では、メータが大きく感情を露にし、弦楽器を濃密に歌わせました。
今日、弦楽器の魅力が最高潮に発揮されたのは恐らくこの楽章でしょう。
第3楽章のスケルツォも甲乙付け難い。本当に弦が素晴らしく、理想の名演でした。
ただ、フレールジャックの葬送行進曲は、ちょっと表情付けが単調だったかなぁ・・・。無難な出来。
そして訪れるフィナーレでは、メータは思いっきり暴れるかと思ったのですが、枯れてしまったか(?)、あまりアクションは無かったです(勿論、決め所では腕を振り回してましたが)。
ただ音量は凄くて、最強奏では太陽のごとくさんさんと輝きます。オケとしての一体感を感じました。これも、マーラーを聴く醍醐味の一つですね。
欲を言えば、フィナーレでは起立して欲しいのと、もう少しだけ金管の音量が欲しい。
あまり第1楽章と変っていませんでしたから、何か突き抜けた印象が足りないんだと思います。

とはいえ、満足の演奏。客席もまれに見る熱狂振りで、私もブラヴォー何発か献上してまいりました。
アンコールの「雷鳴と稲妻」も堂に入った演奏。管楽器の名人芸が光ってましたね(特にボーン)

(ちなみに、今回の日本公演ではウィーン気質・雷鳴と稲妻・ホヴァンシチナ前奏曲など多くのアンコールを用意していた模様。お疲れ様でした!)

イスラエル・フィルは、弦を筆頭に大変優れたオーケストラですが、
メータの指揮に慣れていることもあるのでしょうか、やや表情が淡彩です。
また、問題点として演奏中にガサゴソと楽員自身(特に金管!)が音を立てている。このように、音に対する微妙な心遣いが出来ないのでは、当然演奏もがさつになって行くのではありませんか?
こういう小さなことが、楽団全体の綻びに繋がるかもしれませんから、是非とも改善願いたい。

一方のメータ、録音だと(特にEMI)鈍重で、?なのですが、ライヴはやはり素晴らしいですね!
フレーズ間の微妙な間の取り方が非常にウマいんです。メリハリがよく付いている。

色々書きましたが、いい演奏会でした。
学生券(B席→3000円!!)さえ買えれば、また行きたいと思います。