こんにちは。
先日1/26に、インバル/都響のマーラー2番が発売になりましたね。
既にtwitterなどで感動の声が広まっているようですので、
(宣伝のためにも)私も簡単にレヴューを書いておこうと思います。

マーラー:交響曲第2番「復活」《2枚組》/エリアフ・インバル(指揮)

¥3,800
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自分が聴いた演奏会のライヴCDのレヴューを書くとき、
いつも考えるのは「一リスナー」と「当日の演奏を聴いた人間」、どちらの立場から書けば良いのかということなのですが、今回は特に悩みましたね。
6/19、サントリーホールで聴いた演奏と、この2枚のCDの印象があまりに異なっているのです。
どちらが良い悪いということではないのですが、CDの方がかなり熱演風なのです。インバル/都響の演奏では、前にもこういったことはあったのですが、今回ほどこの差が顕著なのは初めてでして・・・その熱気に吹き飛ばされそうになりつつも、「ここまでだったか?」と自問している自分がいます(前作の「3番」では、オンマイク気味の録音のせいだろうと決めつけることができたのですが、この「2番」は残響音もよく録られていますので、なかなか結論に達することが出来なさそうです)。

さて、肝心の演奏内容については、リスナーの皆様の期待通り、演奏最高・録音最高・ライヴ感満点と三拍子揃った、比類ないものになっています。特にこのシリーズにおいて、声楽付きの作品では、これまでオケ側は最高の演奏をしているのに、合唱・独唱の発音の問題や声量の乏しさが演奏の魅力を減退させていることがありましたので、独唱にドイツ語圏の名手を迎え、よく鍛えられたプロ合唱団を迎えた今回の演奏は、総合的な観点から見て「完全無欠の大名演」と称して何の躊躇いもありません。
第1楽章冒頭から都響の弦には膨らみがあり、日本のオケにありがちな「熱演だけど音色が汚い」ということとは無縁です。インバルのアプローチは極めて理知的で、低弦が出す第1主題は、彼の指揮の下にがっちりと制御されており、重厚ながら荒々しさはありません。一方、唖然とするようなテンポの変化(スローテンポで叩き付けるフレーズの圧倒的な説得力は凄まじいものです)やオーケストラ全体の急ブレーキなどを頻繁に聴くことになります。特に、第1主題が回帰する箇所で、あざとさの一歩手前まで行ったスローテンポのコントラバスから始まり、ホルンのコラール風旋律などが織り交ぜられるにつれてテンポを上げ、自然に音楽を高潮させていく手腕は、流石はスペシャリストと言えましょう。
転じて第2楽章では気持ち速めのテンポで、しっとりとした音楽。都響のニュアンス豊な弦楽の室内楽的で親密なアンサンブルが、時には甘く、時には厳しい演奏を聴かせます。また、木枯らしのようなフルートのソロも見事なものです。楽章最後の最弱音のピツィカートに込められた思いの丈は一際大きく、聴き手の心にしみじみと染み入ります。(個人的にはこの楽章が一番気に入っています)
天上世界的な安堵感も束の間、第3楽章ではティンパニの強奏(Bravo!)により一気に俗世に叩き落とされます。諧謔味に満ちた楽章ですが、インバル/都響の演奏は極めてクールで、時には不気味です。
木管楽器の活躍が目立ち、特にオーボエとクラリネットはgood jobです。楽章最後には全管弦楽の咆哮が、終楽章を予告しますが、その後の弦楽の、量感のある息の詰まったような響きが実に切実(実演でも感銘を受けた箇所でした)。
第4楽章では、名手フェルミリオンの深々とした歌を存分に味わえます。特に、クラリネットに導かれ、暗闇に差し込んだ一筋の光の如く雰囲気が一変する箇所の
「Da kam ich auf einen breiten Weg.(私は一本の広い道にたどり着いた)」
の歌唱は極めて表情豊かであり、矢部コンマスの雄弁なソロやその他の弦楽との絡み合いは実に艶やかで、ずっと聴いていたいと思わせるものでした。
間髪入れず第5楽章へ。爆発的な冒頭は突っ走りますが、アンサンブルは乱れません。
舞台裏から聴こえるホルンの呼び声はー恐らくインバルの要求でしょうが―くっきりした音色。
そして、速いテンポのまま、木管と弦楽が対話して切迫していきますが、かなり唸り声が聴こえ、ライヴ感抜群です。その後の神秘的なコラールが頂点に達すると、やがて打楽器群のクレシェンドに導かれ阿鼻叫喚の音世界へと突入しますが、この演奏ではこのクレシェンドを2度ともかなり急激に(通常の演奏の1/2程度では?)行います。その後テンポを落として奏される弦楽の、他を圧するような厳然とした響きは聴き手の気持ちを多いに煽ります。かなりのスタミナが要求されるである金管楽器も安定しており、ホルンの勇壮なコラール主題も加わって、ズンズンと突き進んでいきます。バンダの金管ファンファーレとの連携も完璧。やがて、楽章冒頭の主題が回帰し、遂に爆発。強烈な瞬間です。
再現部は荘重に進められ、沈黙の中に現れては消えていく各ソロも見事。やがて真の沈黙が訪れたとき、合唱が「よみがえる、そう、よみがえるのだ」と歌いだすのです。ドイツ語の発音がかなり明瞭で、よく歌詞が聴き取れます。また、各フレーズ間の間も大分考えられているようですので、きっとインバルがこだわったのでしょう。この合唱の感銘は大きいです。流石プロフェッショナル。フェルミリオンの「O glaube...」も感動的で、ナーデルマンともども母国語としての堂々たる表現を聴かせてくれます。そして、合唱とオーケストラが一体となって同じ旋律を繰り返しながら、頂点へ向かっていきますが、都響は疲れを見せるどころかますます音色の輝かしさとパワーを増し、圧倒的なクライマックスを築き上げます。そして感動的に示される「復活」動機を金管群がベルアップして示し、聴き手は脳天に音符を刻み付けられるかのような衝撃を覚えます(実際私がそうでした)。インバルの指揮のもと、オーケストラは全てを解放するかのように朗々とホルン動機を奏し、輝かしく全曲を締めくくります。
―残響がホールに響き渡った後、物凄い勢いでブラヴォーが放たれます。日本のオケで聴かれる最大音量のブラヴォーではないでしょうか。この演奏の素晴らしさを物語っています。

やや長くなってしまいました・・・あまりに膨大な情報量が詰まっていますから。
さあ、インバルと都響、もう何も言うことはありません。
マーラーに限らず、毎回の演奏会を日本のオケ史に刻み付けていってほしいものです。
チェコ・フィルとの契約も2012年で終了します(後任はビエロフラーヴェク)から、これからは都響と親密な関係とレコーディングを続けていってくれることでしょう。
そうそう、そのチェコ・フィルとは今年1月の最新ライヴ、マーラー:交響曲第5番がEXTONよりリリースされることが決定しました。このコンビ、就任以来協奏曲伴奏以外のリリースが無かったので、待望の録音といえますね。詳しくはこちら。発売は今年の3/24のようですので、インバル登壇の都響定期の際に買おうと思います。

それでは。