2011年7月19日(火) 18:30開場 19:00開演 @サントリーホール 大ホール

読売日本交響楽団 第506回定期演奏会

管弦楽:読売日本交響楽団
指揮:下野竜也
コンサートマスター:藤原浜雄

ヒンデミット:「さまよえるオランダ人」への序曲
~下手くそな宮廷楽団が朝7時に湯治場で初見をした~
(下野竜也編・弦楽合奏版、世界初演)
ヒンデミット:管弦楽のための協奏曲(日本初演)

---休憩(15分)---

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ハース版)



下野氏は、将来凄いブルックナー指揮者になるかもしれませんね。
「マーラー派、ブルックナー派で言うと自分はブルックナー派」と語る下野氏。
今回の「ロマンティック」を聴いて、宜なるかなと思いました。


さて、まずコンサートは、奇怪な副題を持つヒンデミットの秘曲、「さまよえるオランダ人」への序曲から始まりました。
ホールに入ると、オルガン席の手前に「読響温泉」と記した木目の看板が立ててあります。
(この時点で大体オチ読めますね・・・(笑))下野氏は勿論、楽員さん達も芸達者。
深夜の音楽会で後日放送されるようですので、この位にしておきますね。ぜひご覧ください。
曲自体は、ご察しのとおりヴァーグナーのパロディなのですが、それにしても凄い貶し様・・・筋金入りの愛好家の方は憤怒したのでは??私はそれほどでもないので素直に楽しめましたが。

次の「管弦楽のための協奏曲」は、何と日本初演(正確にはオペラシティの回が初演になりましたね)。フルトヴェングラーも愛好し、BPOと録音も残している曲ですが・・・。日本におけるヒンデミット受容の有様を垣間見ることができるのではないでしょうか(私も「画家マティス」「世界の調和」「白鳥を焼く男」以外さっぱりです)。また、西洋音楽史において「管弦楽のための協奏曲」という題を持つ作品はこれが初めてだったようです。以降今日に至るまで、バルトーク、ルトスワフスキ、コダーイ、スクロヴァチェフスキなど、数々の作曲家が手掛けていますね。
また曲想は、モダンでがありますが大変聴きやすいもの。このコンビならではのキレのある表現で、大いに楽しめました。

休憩を挟み、メインの「ロマンティック」。正直、下野氏のブルックナーと言われてもピンと来なかったのですが、ご本人は昔から傾倒してらっしゃるみたいですね。今回、Mr.Sとのツィクルス、尾高氏との8番(昨年12月)と名演を重ね、国内では同作曲家を最も得意とする読売日響との演奏ということで、楽しみにしていました。
ただ、今回の「ロマンティック」自体は3、5、6、8番ほど好んで聴く曲でもないのです・・・なので特に苦手なアダージョ楽章は割愛させて下さい。

この記事の冒頭で、下野氏は将来凄いブルックナー指揮者になるかも、と書きました。彼の年齢で、ここまで彫琢されつつ、しなやかに流れるブルックナーを演ることは、並大抵ではないことだと思うからです。
大抵の若手(巨匠年齢でもちらほらいますが)がブルックナーを演奏すると、細部にこだわるあまり流れが滞ったり、逆に勢いばかりの荒い演奏になったりします。しかし下野氏はどちらの条件もクリアしつつ、ブルックナー特有の神秘性、官能性をも表出させることに成功していました。
冒頭、弦の荘厳なトレモロに乗って現れるホルンの伸びやかなこと!この後ちょっとした事故はありましたが、それもどうでもよくなる程の見事な吹奏でした。トゥッティでは金管のパワーが漲りますが、サウンドが混濁しないのは指揮者の手腕でしょう。
アダージョ楽章を経て、有名な「狩のスケルツォ」。ここでも金管が安定感抜群。下野氏の持って行き方も実に見事なものです。トリオでも弦楽を懇切丁寧に指揮。楽章終了時には何とブラヴォー一発。悲愴じゃないんだから・・・とは思いましたが、叫びたくなる気持ちも良くわかりました。
そして、緊迫感を保つのに最適な、やや速めのテンポで終楽章が開始されます。ここでは、弦の濃密な音色が素晴らしい。ボウイングも独特な箇所があったかな・・・?コーダも、まさにブルックナーとしか言いようのない世界で、抜群のタイミングで全曲は堂々と閉じられました。

名演だったと思います。彼のアプローチで、是非とも3番、6番あたりを聞いてみたいと思わせられました。また、金管群、そしてティンパニの岡田氏(彼の思い切りのいい強打・美音によってどれだけ演奏が引き締まったことか!)など、正指揮者である下野氏の初ブルックナーという「晴れ舞台」を良いものにしてやろう、という意気込みが感じられるような、献身的な演奏でした。

楽器の配置について少し。金管楽器の中で、トロンボーンとトランペットの位置が通常とは逆になっていました(他にも何かあったかもしれませんが・・・)。どういう意図かは本人に聞くしかありませんが、これによって第3楽章の掛け合いの箇所は非常に立体的に聴こえました。

下野氏、今回でまた一皮むけた音楽を聴かせるようになった気がします。来シーズンも期待しています!