2011年7月28日(木) 18:15開場 19:15開演 @サントリーホール 大ホール

新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第481回定期演奏会

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
指揮:クリスティアン・アルミンク
コンサートマスター:西江辰郎

ウォルトン:ヒンデミットの主題による変奏曲
ブリテン:ヴァイオリン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
バッハ:ソナタ第3番より 第3楽章

---休憩(20分)---

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容


新日本フィル、3月の小泉さん指揮によるショスタコーヴィチ以来。
やっと音楽監督・アルミンクの指揮で聴けました。それにしても彼、かっこいいですね。
ヨーロッパ版千秋真一という感じです(千秋の方がマネしたか?)。

なかなかに渋い演目ということで、客席は7割程度の入り。でもこれだけ埋まるものなのですね。
流石は才人アルミンク、今日のプログラムも、3つの作品の織り込まれ方が絶妙。
ヒンデミットに自作のヴィオラ協奏曲を初演してもらったウォルトンが、彼の恩返しへの意味を込めて書いたのが一曲目。そして同じく英国の作曲家ブリテンが、スペインはバルセロナを訪れた際の体験、そしてヨーロッパに漂うファシズムの予感を込めて、ヨーロッパを離れアメリカに渡ってから書き上げた傑作が続きます。そして、ナチスの手を逃れ、同時期にアメリカへ移ったヒンデミットが完成させた代表作がメインとなっているわけです。共通項多いですね・・・。「戦争の影」も色濃いです。

ウォルトンは、この前敬愛する尾高さんが「ベルシャザールの饗宴」を日本フィルと取り上げたりしていましたが、個人的には一度も聴いたことのない作曲家です。まあ日頃はエルガーすらなじみが薄いからなぁ・・・。
このヒンデミット変奏曲ですが、クールかつ派手で、大変聴きやすく、映画音楽のように聴こえました。まあ一口で言えば「よぉ分からんかった」ということですが(オイ)。いずれ聴き直してみたい曲ではありました。

そして、ファウストをソロに迎えたブリテンの協奏曲。楽譜がありました。

これは、もう何と言いますか、音楽というよりは肉声を刻まれたような感じでして、心の底から震え上がりました。
南国での体験・ファシズムの暗い影という全く異なった出来事が、異国情緒溢れる軽やかで気怠い響きと、低音楽器の響きとして曲中に混在する点、ブリテン特有のアイロニーのように聴こえました。また、その南国のメロディすら悲痛でグロテスクに変容し、テューバが死の影をちらつかせたかと思うと、南国のリズムをヒステリックなまでにオーケストラが奏でる(メロディは既に陰鬱なものと化しています)といった、「沈黙の対決」とも言うべき変化(第2楽章)は、作曲家の苦悩・葛藤をも投影しているのではないでしょうか。そしてそんな不安定さのまま、トロンボーンの響きで第3楽章へ移行すると、対立というよりはむしろ、底知れぬ将来への不安が描かれ、表面的には大人しく見えて実は地獄があんぐりと口を開けて待っているかのような、恐ろしい音楽となります。結尾ではブリテンが疲れ果ててペンを置き、「この世界は、これから一体どうなるんだ」と我々に問いかけているような、不安と祈りの入り混じった感情が静かに提示されています。

ファウストのヴァイオリンは、ベルクを弾いたツィンマーマンとは全くスタイルは違いますが、同レヴェルの金縛り度。こういう経験が間を置かずにできるというのは本当にありがたいことです。ファウストのヴァイオリンは、「求道者」という言葉がそのまんま当てはまる、超辛口の音色。表現も同じく、第1楽章冒頭のティンパニのリズムとピツィカートが交互に奏される箇所でも絶対にリラックスしない。全編が非凡なまでに力強い精神に貫かれていました。内容的に前述の通り複雑な曲で、フラジョレットでのスタッカート(!)や、重音がこれでもかと盛り込まれたりと、技巧的な難易度も非常に高いように思えました。彼女はこの曲を完全に消化し、そのストラディヴァリウスはブリテンの肉声と化していました。恐るべきヴァイオリニストです。彼女こそ「超一流」でしょう。

こういう演奏だと、聴く方も同じ緊張を要求されるわけで、聴衆には負担がかかるのです。その点今日のお客さんの集中度は凄かった。咳こそ数度あったものの、プログラムを落としたりといった無神経な人は皆無。曲が終了しファウストが弓を下すまで、永遠に続くかと思うような沈黙(実際には十秒程かと)を保つなど、こちらもブラヴォーでした。終演後多くの方が熱烈な動作で拍手を送っていたのも印象的。
アンコールのバッハは、一転して柔和な音色。やはり、協奏曲での音色は意図的に彼女が作りだしたものだったのでしょう。

オケの定期演奏会なのに、新日本フィルについてこれまで一言も触れていません。
彼女の演奏にぴったりと寄り添いつつも、第2楽章では見事な暴れっぷりでした。やや乾いたこの音色は、曲想にも合っていたと思います。

休憩後のヒンデミットは、最初から最後まで底抜けに楽しい曲!
彼の代表作ということですが、第1楽章以外は未聴でした。
ウェーバーの主題は素朴でシンプルなようですが(第2楽章のトゥーランドットなど本当にウェーバー書いたの??と思ってしまいました)、ヒンデミットがアメリカに渡ってからの作品ということで、実にモダン。途中ジャズを連想させる個所もありました。
それにしても、第2楽章は本当にチンドン屋かと思いましたよ。フルートのソロの後、思わず踊りだしたくなりました。
第4楽章の行進曲は豪快なのに洗練されているという、不思議な魅力があり、最後の畳み掛けも見事でした。
全体的に管楽器の難所が多そうでしたが、アルミンク指揮するオケは安定した演奏。ただ弦がやや薄い気がします。木管の色彩感、金管の輝かしさは素晴らしかった。


でもやっぱり今回は、ファウスト、ファウスト、ファウストでした・・・