東京都交響楽団 第727回 定期演奏会Bシリーズ
@サントリーホール
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
~ソリスト・アンコール~
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より サラバンド

---休憩---
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」

ヴァイオリン:ジュリアン・ラクリン
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートミストレス:四方恭子
指揮:エリアフ・インバル


インバルと都響の演奏会は、いつも「もう一度聴かせてくれ!」と思うのですが、今回ほど強くそれを感じたことは初めてです。
かつて聴いたマーラーでも、ここまでではありませんでした。

ホールの周辺、中はすっかりクリスマス仕様。チケットは全席完売のはずですが、ぽこぽこと空席があり、整理券もかなり出したようです。

前半、ラクリンをソロに迎えた協奏曲第1番は、意外にもゆったりとしたテンポでの演奏。ラクリンはほとんどテヌートをかけて弾き、インバルも律儀にそれに合わせるので余計に重く感じたのかもしれません。第2楽章、諧謔的なパッセージが現れるところあたりからようやくエンジンがかかった感じです。前述のように粘っこく曲を進めていくアプローチだったので、第3楽章、長大なカデンツァはホールを完全に支配していましたね。まあツィンマーマンのベルクではずっと支配しっぱなしだったわけですが。第4楽章、インバルはオケを盛んに煽り、なかなかに盛り上がって終結。

振り返ってみるとインバル、オケ側主導の演奏になっていたかもしれません。ラクリン、アンコールのバッハではその美音を如何なく響かせてくれました。協奏曲となると、音量がやや足りないように思います。

また、アプローチが曲に対して粘っこすぎる件ですが、彼が08年にヤンソンス指揮コンセルトヘボウ管と披露したブラームスでは、なかなかアグレッシヴな演奏を聴かせていました。あれはマイクのいたずらかな?どちらにせよ、当曲にはもったりしすぎでしょう。客席はこの時点でかなり盛況。

後半は交響曲第12番「1917年」です。

各トップ奏者覚書き:コンミス四方さん、サイド渡邉さん、セカバイ双紙さん、遠藤さん、ヴィオラ中山さん、店村さん(私は都響メンバーとしてお目にかかるのは初めて!)、チェロ古川さん、コンバス星さん(元読響首席)、フルート寺本さん、オーボエ本間さん、クラリネット佐藤さん、ファゴット堂坂さん?、ホルン有馬さん、トランペット岡崎さん、トロンボーン古賀さん、テューバ佐藤さん、ティンパニ久一さん。(打楽器群で、バスドラの皮をぶち抜きそうな強打を披露したのはN響の方ですね)

まさしく圧倒!爆演なのにどこまでも整然としている。都響もホールを震撼させました。
冒頭の低弦の響きから打楽器の強打を伴う終結まで、どこを切っても緻密に設計された音楽を堪能。インバルの見通しの良さには脱帽するほかありません。
ほぼリハーサルで作り上げたのでしょう、本番は最小限の動きで都響を完全に統制していました。(それでも唸る飛ぶの熱演でしたが)
特に第2楽章の沈滞した弦の響きは、まさに凍てつき、暗い湖の底を見通そうとするかのよう。ここだけでも今回聴いた甲斐がありました。第3楽章~第4楽章冒頭のドンチャカは豪快に押し進め、ホルンの雄渾な吹奏が現れる箇所で大きくテンポダウン。聴きどころを存分に聴かせてくれました。終結部では何とアッチェレかけました。ここは速いと強引な歓喜といった印象がより強まりますが、インバルは肝心な個所の解釈はこちらに完全に委ね、自身はひたすらオケとスコアを音化することに注力していた気がします。
そして都響!!ますます進化しています。インバルだけではなく、フルシャ、小泉氏、ギルバートといった超一流のビルダーからの薫陶を受け、以前よりも風格や香りが増しているのはうれしい限り。店村氏もなかなかどうして、馴染んでいるように見受けられました。終演後は微笑を浮かべていましたし。それにしても、このオケは矢部さんがコンマスをするときは「気迫」「鋭さ」が際立ちますが、四方さんがコンミスの時はある種の「余裕」が感じられますね。12番という壮烈な曲ですが、全編を通して、まさに彼女がかつて属していたケルン放送響のような深みのある音で一貫していました。それを実現できる都響もすごい!管楽器もソロの卓越した技量、トランペットをはじめとする金管のスタミナと正確性はまたランクが上がりましたね。後、第4楽章冒頭のホルンも響きまくってました。あそこだけでももう一度聴きたい。久一さんもまた巧くなったかな?
そうそう、客席も今回は素晴らしい。上野の5番はややフライング気味だったとのことで心配したのですが、厳然たる響きによる終結にみな圧倒されたのか、ホールに残響が十分に響き渡ってから、かなり余裕をもってブラヴォーと大拍手が放たれました。いつもこれなら最高ですね。好々爺のようにオケとの良好な関係を示すインバルにまた、惜しみなく賛美を送ります。
震災があり3月は中止、5月は都合で聴けなかった私にとって、今回のインバル芸術との再会は実に去年の6月、あの「復活」以来でした。是非ともサインを!と楽屋口に走り、エクストンのCDとプログラムにサインを頂戴している際マエストロはこうはっきりおっしゃいました。

"Shostakovich will come also!"(ショスタコーヴィチも(CDが)出るよ!)

マエストロも本日の演奏に大いに満足されたのでしょう。CD化も本当に楽しみです。

ロシア革命の賛美のようで実は批判であるとか、二枚舌とか、そのようなことばかり開演前考えていましたが、マエストロ・インバルが震災を経験した我々に送る「生」の肯定というメッセージの前に、そのようなことはどうでもよくなりました。結局、演奏会において最も重要な要素はそこにある「音楽」そのものですからね。

都響の皆様、大曲お疲れ様でした。大野さんの「第9」も今からとても楽しみです。