2012年3月17日(土) 13:20開場 14:00開演 @東京オペラシティ コンサートホール

東京都交響楽団 「作曲家の肖像」シリーズVol.86 《ドヴォルジャーク》 

管弦楽:東京都交響楽団 
コンサートマスター:山本友重
ピアノ:クン=ウー・パイク
指揮:エリアフ・インバル

ドヴォルジャーク:ピアノ協奏曲 
---休憩--- 
ドヴォルジャーク:交響曲第9番「新世界より」

御年76歳を迎えたマエストロ・インバル。
その音楽は雄大なスケールを湛えつつも、細部まで彫琢が行き届き、新たなアプローチが演奏に盛り込まれないことはありません。

今回のドヴォルジャーク特集、正直曲目的にどうなのかな、という思いがあったのですが、やはりこのコンビ、ホールを出る頃には大満足でした。都響の楽員の方のブログを拝見すると、リハーサル2日で本日の演奏会に臨まれているようですが(あ、勿論今回が特別なわけではなくて、このシリーズは2日、という規定のものでしょう)、たったそれだけのリハーサルでこれまで練られた、完成度の高い演奏を披露できるということは凄いことだと思います。かつてギュンター・ヴァントが要求したような一週間のリハーサルを行えばどうなってしまうのか、とも思ってしまいますが・・・。

本日は矢部さんはお休み、コンマスはお久しぶり山本さん、セカンド遠藤さん、ヴィオラは鈴木さん、店村さん揃踏みという感じで、さらに管楽器は今月で退団される堂坂さん、本間さんが出られていました。

さて、前半は珍しいピアノ協奏曲。ソロのクン=ウー・パイクは、インバル/チェコ・フィルと共演してブラームスの第1協奏曲を出していますね。良いらしいですが、買っていません・・・。
第一印象は、渋い音楽を創るピアニストだということ。かなり渋い。黒光りするタッチで淡々と紡がれる音楽は、インバルの強い個性にやや打ち消された感があります。恐らく、ソロでこそ真価を発揮するタイプのピアニストなのだと思います。
この曲、ドヴォルジャーク若書きの作品とのことですが、かなり冗長だと思います。まだ第1楽章はその執拗さに辟易としつつも雄大で聴けましたが、その後は退屈に感じてしまいました。演奏が悪かったはずはないので、やはり曲の問題でしょう。リヒテルとクライバーの盤でも借りてみようかな。

そして後半の「新世界より」。「未完成」「運命」と並ぶ超名曲の一つでありますが、巨匠インバルの手にかかるとあら不思議、初めてこの曲を聴くような場面がちらほら。
シンフォニーをよくアタッカで演奏するインバルですが、今回は第1・2楽章、第3・4楽章がそれぞれ切れ目なく演奏されました。
第1楽章、冒頭から表情は非常に濃く、トゥッティでは硬質なマレットのティンパニが轟きます。いつものインバル節炸裂ということですね。タメもあります。第2楽章は、ボヘミアへの郷愁といったものではなかったですが、都響の弦楽が低音から高音まで澄み渡り、純音楽的に美しく響きました。途中、弦楽のトップ奏者が室内楽的に奏で、また合奏へ戻っていく瞬間は本日のハイライトであり、都響の素晴らしい美点をもっともよく表しているといえましょう。コーラングレも最高。休止を挟んでの第3楽章からは、前半以上にインバルらしく徹底された演奏。彼が腕をぶんと一振りすれば弦のニュアンスがぶわん、と変化し、中間部の舞曲ではトライアングルに弱音のキューを出す(笑)対応していた奏者も流石。そして第4楽章は猛速!都響の金管群も痛快に鳴り渡ります。今回はホールの丁度中央に位置する席だったために、彼らの音はモロ直線的に飛んできました。パワー全開!インバルも更に熱く燃え上がり、怒涛の終結ではオペラシティが轟音に包まれました。ここに来て、余韻を楽しめない拍手が本当に残念。消え行く曲なのだから、音が終わったらハイ拍手、はダメって分からないかな・・・。

ビフテキのように分厚いサウンドで、インバリッシモを響かせた名コンビ、4月まで約1か月の重量級フェスティバルのオープニングとなったわけですが、会場は興奮に包まれ、幸先の良い出港となりました。インバルは早くもソロ・カーテンコール1回、満面の笑みで応えていました。この分だと大地の歌とかどうなるのかなぁ。

最後に、ショスタコ4番でのフライング拍手・ブラヴォーは絶対にやめてください。本気で呪いますよ。本気で。