2012年8月23日(木) 18:30開場 19:00開演 @キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)

サイトウ・キネン・フェスティバル松本2012 オーケストラ・コンサート

シューベルト:交響曲第3番

---休憩---

R.シュトラウス:アルプス交響曲

管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ
コンサートマスター:田中直子
(シューベルト)、豊嶋泰嗣(R.シュトラウス)
指揮:ダニエル・ハーディング


サイトウ・キネンに行くのはこれで3回目ですが、これほど満たされた気持ちで会場を後にしたのは今回が初めてでした!ハーディング恐るべし!

いやぁ~、世界に音楽祭数多しといえど、当夜のサイトウ・キネン・オーケストラの一体感はなかなか稀有なものではなかったでしょうか。ハーディングの、緻密にして痛快な音楽作りもその方向性に合っていました。

さて、今年のオケは管楽器陣が大変豪華。かつて参加していたビッグネームが帰ってきたという方が正確でしょうか。金管には毎年おなじみ、トランペットのガボール・タルケヴィ(BPh首席)に加え、ホルニスト、ラデク・バボラク(元BPh首席、現在ソリスト)、が帰ってきましたので無敵。アルペンシンフォニーは大量の金管を動員しますが、国内オケ首席級がズラリと顔を揃えて壮観。トランペットでは札幌響の福田さんと都響の高橋さんが同じ舞台に立ち、新旧都響ブラスの「顔」の共演など嬉しいハプニング(?)も見られました。木管にもフルートのジャック・ズーン(ルツェルン祝祭管・モーツァルト管首席)が戻ってきてくれました。 

プログラムはシューベルトの3番というなかなか聴けない曲で幕を開けます。この曲、クライバー/WPhの名盤で予習していきましたが、第1楽章の鬱々とした序奏からクラリネットの弾むようなリズムに始まる主部は一気に快活さを増し、終結ではなかなかに立体的な響きも立ち上がるなど、30分にも満たない曲ながら聴くべきところの多い曲です。第2楽章が大変短いです(笑)
この曲では弦が12型編成の演奏でしたが、それ以上に感じる弦の厚みはスゴイ。ハーディングは古楽畑出身で有名ですが、ティンパニはモダンなものを使用し、正統的なアプローチで挑んでいました。表現はきりりと引き締まりモダンで、よくありがちなフニャフニャとしたシューベルトとは完全に決別していました。まさに最初から全力投球!

いきなり前半からハイレヴェルの演奏でしたので、アルペンはどうなることかと思いましたが、ハーディングさんやってくれました。緻密、豪快、壮麗・・・自分のボキャブラリ不足を棚に上げて恐縮ながら、ステージで繰り広げられる演奏は如何せん言葉では形容しがたいエネルギーを放出していました。100人を超える巨大編成のオーケストラが生物のように呼吸し、咆哮するのです―恍惚としました。
さて、アルプス交響曲というと標題性や精巧な管弦楽法に注目しがちですが、今回のプログラムノートも記載されているように、シュトラウスはニーチェの「アンチクライスト」に強い共感を覚えて作曲を行ったわけで、その内容は単なる標題音楽にとどまるものではありません。キリスト教の、弱者救済の概念に軟弱さを感じた彼らは、意気揚々と活動する人間とその周囲の係りを表現したわけですね。シュトラウスの管弦楽曲を聴いて「独善的」という言葉がしばしば浮かぶのは、いわば当然と言えるのかもしれません。
今回の演奏は、シュトラウスのスコアを実直に紐解きながらも、豪壮なエネルギー感で全曲を押しに押していくという、一見相反するような試みを同時に達成していました。先ほども若干書いたように、ハーディングの抜群のコミュニケーション能力が成功を導いたのだと思います。なんせ彼、具体的なキューは極めて最小限といってよく、眼力で指揮していた部分が非常に多かったですからね。勿論、超豪華メンバーによる抜群のパフォーマンスも圧倒的。頂上直前のオーボエソロなど、これ以上ないほど可憐で鳥肌が立ちましたし、「嵐と下山」ではかなり高速ながら全ての楽器が混濁することなく凄まじい音響地獄。その他にも登山のテーマを奏でる弦楽のこの上なく魅力的な厚みや「森に入る」でのコンマスらの甘美なソロ、ジャック・ズーンのあまりに写実的な雨音など、あらゆる箇所が理想的と呼べるものでした。
これは後日談ですが、一般的な演奏はどうかとティーレマン指揮ウィーン・フィルの演奏をチェックしてみました。「日の出」「頂上」で登場するシンバルは普通は1つですが、松本では3つ使っていたことに驚きです。(ルイージ指揮シュターツカペレ・ドレスデンも観ましたが、こちらも1つ)録音で聴いたらきっと強烈だと思います。余談ですがこのシンバルの箇所、おもむろに第2ティンパニのドン・リウッツィ(フィラデルフィア管首席)が動いたと思ったらなんとシンバルの方に向ったのでびっくりした覚えがあります。他にも必死にウィンドマシンを回す奏者や、途中で登場するヴァーグナー・テューバ、客席後方から響く巨大バンダ隊など、色々楽しめました(笑)

サイトウ・キネンのオーケストラ・コンサートとしても近年稀にみる出来映えではなかったでしょうか。カーテンコールはオーケストラ全員が舞台後方に並び、一斉にお辞儀をするなど、錚々たるメンバーが純粋に音楽を楽しんでいることが十分すぎるほどこちらにも伝わり、観ていて気持ちがよかったです。ジャック・ズーンがハーディングの指揮棒を奪っておちゃらける場面もそう観られるものではないと思います(笑)

来年は受験なので行けないと思いますが、絶対再来年も行きます!!
最後に松本の美しい風景を一つ。アルプス公園です。

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