近況報告風言い訳。2014/3/20 金聖響/神奈川フィルのマーラー6番

March 31, 2014

2014/3/14 藤村実穂子 リーダーアーベントⅣ

藤村実穂子 リーダーアーベントⅣ
@紀尾井ホール 19時開演

白いジャスミン
高鳴る胸
愛を抱いて
ああ恋人よ、別れねばならない
憧れ
しずかな歌
解放
岸辺にて
帰郷
小さな子守歌
子守歌
(以上、R. シュトラウス)
-休憩-
マーラー:歌曲集「子供の魔法の角笛」より
ラインの小伝説
この世の生活
原初の光
魚に説教するパドゥアの聖アントニウス
この歌を思いついたのは誰?
不幸の中の慰め
無駄な努力
高い知性への賞賛
~アンコール~
マーラー:歌曲集「若き日の歌」より
ハンスとグレーテ
たくましい想像力
別離と忌避

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
ピアノ:ヴォルフラム・リーガー

始めての声楽ソロリサイタルであった。それが世界のメゾ・藤村実穂子さんというのはなかなか贅沢な経験かもしれない。

前半はロマン派最後の作曲家、R. シュトラウスの歌曲の数々。後半はマーラーの「子供の不思議な角笛」から抜粋して演奏された。

真夜中に体がとろけていく様な叙情性をまとったシュトラウスに対し、この世の実情を巧みに描く諧謔味をもつマーラー。プログラムとしても鮮やかな対比だが、藤村さんの歌唱もまたその違いを明確に描き出したものであった。
各所で言われていることではあるが、この人の歌唱には独特の「凛」とした雰囲気が漂う。周囲を圧し、思わず襟を正したくなるような高潔さがあるのだ。プログラムでは「求道者」という表現が用いられていたが、まさしくその通りだ。
そんな彼女の歌唱は、R. シュトラウスの甘くとろける歌曲にひとつの透徹した視線をもたらす。決して感傷的になりすぎず、ピリリと引き締まったフォルムを維持するが、完璧なドイツ語のディクテーションにより単語の一つ一つに生命が吹き込まれ、デーメルやリリエンクローンの詩の世界をわれわれ聴衆は追体験することとなった。特に、後半の「憧れ」から「子守唄」にかけては鳥肌が立ちっぱなしだった。ドイツ語を大学で履修する身としては、このような素晴らしい世界の理解がやがて待ち受けていると思うと武者震いする思いである。(笑)

休憩を挟んだマーラーでは、前半終始立ち姿を崩さなかった藤村さんは身振りを交えて感興豊かに歌った。こちらからは見えなかったが、きっと表情も細かく意識して変えていたのではないか。やはり「原光」の神々しさはこの人独自のものであるし、「この世の生活」で結局パンを食べられずに絶命してしまった子供の悲惨さなど、一つ一つの情景がひしひしと伝わってくる。
最後の「高い知性への賞賛」はロバやカッコウのパロディ調の曲であるが、ここでは藤村さんには珍しく(?)多少の茶目っ気も交えていた。アンコールもマーラーの「若き日の歌」で、素敵なデザートを頂戴したような気分で会場を後にした。

先日のドヴォルジャークのレクイエムも素晴らしかったことは素晴らしかったのだが、やはりドイツ歌曲において世界的にみても彼女ほどの高みに達している歌手は稀有だろう。素晴らしい体験に感謝したい。


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takupon68 at 23:40│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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