タイトルも変え、再開します。2015/4/4 東京・春・音楽祭 ヤノフスキ/N響の「ヴァルキューレ」

April 04, 2015

2015/4/3 大野和士 都響音楽監督就任披露1

2015/4/3
東京都交響楽団 第786回定期演奏会Bシリーズ(大野和士音楽監督就任記念公演1)
@サントリーホール

シュニトケ:合奏協奏曲第4番=交響曲第5番
ベートーヴェン:交響曲第5番

管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉
指揮:大野和士


本年度初めてのコンサートは大野監督の就任披露。日本人離れしたキャリアを積んで、満を持しての就任という印象。

 18:30からのプレトークで大野さんが登場すると、早くも会場から盛大な拍手が。プレトークは15分程度の予定だったようだが、大野さんは話しているうちに次々とイマジネーションが膨らんでしょうがないといった感じ。今回のベートーヴェン→シュニトケ→マーラーを関連付けたプログラミングについて、様々な観点から触れられた。最初大野さんが話し出した時、殆ど肉声しか聞こえずマイクの調子が悪かったのかと思っていたが、何とマイクを上下反対に持っていた(笑)その際の対処で一気に聴衆の緊張が取れてよかった。

シュニトケは16型4管・多数の打楽器を要する大曲。コンセルトヘボウ管の100周年記念で書かれた作品で、シャイーと同オケの録音(DECCA)を聴いて臨んだが、当然ながら演奏はかなり異なる。都響の鋭い音色を前面に出したシュニトケサウンドは時にかなり刺激的。轟音箇所のみならず弱音でもピンと張り詰めた緊張感が維持される。特に後半楽章の悲痛な表情は凄みがあり、大野さんは顔を般若の如く歪ませて濃密な音を引き出した。
合奏協奏曲と交響曲の間に位置するこの作品で当然重要になるソリスト達も都響なので粒ぞろい。1楽章のVn矢部さんとOb広田さん、2楽章でマーラーの断片を奏でる弦楽四重奏、3楽章でのTb佐藤さん、全てのソロが超一級。そこにCem鈴木王子という豪華ゲストが主張を加えるのだから悪かろうはずがなかった。お互いが十分に表現しつつ、一つの合奏という形式に収まっている。見事な演奏だった。

後半のベートーヴェン5番、大野さんがプレトークで語っていた通り正に「交響曲の王様」というべき名曲中の名曲。そして、その言葉に相応しい威容を誇る超名演が繰り広げられた。編成はシュニトケから打楽器が消えただけの16型倍管、都響でこれだけの大編成でやってしまうと飽和するのでは、と一瞬危惧したが杞憂だった。第一音のアウフタクトを渾身の力で大野さんが振り下ろすと、物凄い密度の弦が鳴り渡る。アンサンブルは当然揃っているのだが、その気合の入り方が凡百の演奏とは桁違いで鳥肌モノ。大野さんは全曲かなりの速さで(32分!)振り通したが、再現部やリピートで巧妙にディナーミクとテンポを変えてメリハリを付ける。また第2楽章の低弦などはかなり濃厚でしなやかに歌わせ、CbのC音をぐわんと強調。3-4楽章の有名なブリッジ箇所ではオケの集中力を一際自らの元へ高め、空気感も凝縮させて冒頭の三音で高らかに解放、その後すぐにテンポアップ。リピートではインテンポ、再現部では再びテンポ変化を実行した。とにかくこの楽章では弦の突き抜けるような高らかな凱歌があまりに輝かしく、即興的なアッチェレランドも加えて更に高揚して怒涛の終結となった。喝采はCbのブゥンという響きが十分消えてから沸き起こり、たっぷりと余韻を味わえたのは嬉しい!
都響は前半の鋭さとは違うしなやかで重厚なサウンド。大野さんが目指している方向性だと思うが、意地でもアンサンブルを合わせて硬くなるのではなく、聴きあうことで生まれる有機的な繋がりを全曲に渡り実現しようとしていた。弦楽は勿論、倍管でダブル首席と鉄壁の木管のニュアンスの豊かさ、発音のクリアさが声部のクリアさを実現していた。モダン・オケでベートーヴェンを今演奏する意義をひしひしと感じられた、強靭な意志の漲る圧巻の就任披露演奏会に震撼した。

期待十分の大野/都響、次回はいよいよ都響の「伝家の宝刀」マーラーである!


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takupon68 at 09:34│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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