2015/3/7
Voces Veritas 第5回演奏会
@新宿文化センター

エベン:待降節と四旬節第三主日のミサ曲
ペルト:深淵より
ペンデレツキ:主をほめたたえよ
三善晃:男声合唱のための「王孫不帰」
信長貴富:新しい時代に
木下牧子:蝉
森山直太朗(田中達也編曲):夏の終わり(編曲委嘱初演)
松下耕:男声合唱とピアノのための組曲「罰と罪」(委嘱初演)
~アンコール~
松下耕:出発(男声版委嘱初演)

オルガン:新山恵理
ピアノ:前田勝則
合唱:Voces Veritas
指揮:松下耕、宮城太一

合唱をしている割にはあまり合唱の演奏会には行かないのだが、プログラムに惹かれたのと、尊敬する先輩が出演されるのでVoces Veritasの演奏会を聴いてきた。

1stステージはいわば宗教曲ステージ。聴衆は能動的に音楽に参加し、その意味するところを入念に汲み取る必要がある。ややハードルが高い曲選だと思った。エベンは現代作曲家に位置する人だが一声の作品で、多声音楽からグレゴリオ聖歌まで回帰したかの如く禁欲的。芸術的な味わいを楽しむ余裕を聴き手に与えず、信徒としての敬虔さを求めているという印象を受けた。戦争経験を持つ東欧の2大作曲家の作品は静謐で、ペルトはともかくペンデレツキにしてもかなり聴きやすい印象。
2ndステージは三善晃「王孫不帰」。地球誕生から現在までのあらゆる魂が言霊となって凝集し、強烈な磁場を形成し空間をねじ曲げるような凄まじさがホールを充たす。思わず顔を背けたくなる。男声合唱の最高峰とも言われる難曲を、なんとVVの皆さんは暗譜で歌っていた。両翼に雅楽を思わせる打楽器を配し、「はたり」「ちょう」と空間を切り裂くソリストと一体となって祭祀性のある空気を形成していく。
3rdステージは『新しい時代に』と題されたアンソロジー。王孫不帰の強烈すぎる余韻を包み込むような温かみあるステージだった。親しみやすいからといって芸術性が薄れることはなく、曲冒頭の透徹したハミングや中音部の響きが心地よい。特に「夏の終わり」は編曲の良さも含めて出色。
4thステージは音楽監督松下耕氏の「罰と罪」初演。宗左近の詩は極めて平明だが、それだけに二項対立構造がストレートに伝わってくる。無から有が生まれ、罪と罰が対比される中「愛」という新たな対立軸が初めて登場した瞬間の音色の変化にハッとさせられた。人間に生を授ける神にまで罪や罰の意識は遡り、やがて表裏一体である罪と罰を受け入れて生を「美しい花」とすることを高らかに歌う。これのほかにすがるものなどないのだ、と言わんばかりの切実さが痛いほどに伝わってきた。最後まで厚みのある合唱を聴かせてくれたVVの皆さんに心からの拍手を送った。アンコールも素敵だった。
プログラムを一貫するキーワードは「贖罪」だと思うが、それは神→戦争→社会→われわれ一人ひとり、と演奏会の進行につれフォーカスされていった。「罰と罪」でたびたび語られていたように、我々が生を営むこと自体が大きな罪であるのが避けられない事実ならば、せめてその生を「美しい花」とすることが自分に出来る贖罪なのだ。同世代の合唱団から受け取った渾身の回答は、そういうことなのではないかと思う。