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February 23, 2015

2015/2/22 オッテンザマー、小泉和裕/都響の名曲選

2015/2/22
東京都交響楽団 プロムナードコンサートNo.362
@サントリーホール

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
モーツァルト:クラリネット協奏曲
~ソリスト・アンコール~
ハンガリー民謡
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」

クラリネット:アンドレアス・オッテンザマー
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:四方恭子
指揮:小泉和裕

前後半でガラッと曲目が変わる。必然か偶然か、演奏の印象もそれに伴って全く違ったものとなった。

都響のモーツァルトというとそれほど印象がないが、昨年レヴィンを迎えて弾けるような協奏曲や交響曲を聴かせてくれたのは新鮮だった。それに比べると今日の小泉さんはオーソドックスで、ピラミッド型の堂々としたモーツァルト。ドン・ジョヴァンニの序曲はシリアスな響きなので、彼の構えの大きなアプローチとの相性は悪くなかった。続くクラリネット協奏曲は、アンドレアス・オッテンザマーがソロを吹いた。昨日FBで"Feel better"と書いていたので、来日当初よりは体調が回復したのだろう。神奈フィルとウェーバーを吹いた時より柔軟性があったように思えた。みなとみらいホールではあまり気づかなかったが、サントリーホールの豊かな(豊か過ぎる?)残響の中で聴くと彼のダイナミック・レンジの広さに驚嘆する。弱音はどこまで小さくなるんだ!というくらい繊細で小さく、なおかつ膨らみを失わない。第3楽章冒頭のように伸びやかな歌を聴かせる場面での闊達な表情もたまらない。ベルリン・フィルならもう一人の首席奏者であるフックスが好きなことは変わらないが、オッテンザマーもまた素晴らしい。オケは頻繁に表情を変えるソロに驚異的なほどぴったり付け、コンマスの四方さんや小泉さんがオッテンザマーとアイコンタクトを交わしながら音を紡いでいく様子には思わずほっこりしてしまう・・・。モーツァルト最晩年の、清澄さの中に哀感漂う名作が理想的な形で再現されたことに感謝したい。この一曲だけでホールに足を運んだ甲斐があったというもの。
続くムソルグスキーの「展覧会の絵」。休憩中に「モーツァルトで得た至福をそのままに帰ってしまいたい」と仰る方が複数名いらっしゃったが、その気持ちは分かった。野蛮な(ラヴェル編なので薄れてはいるけれど)ムソルグスキーに向き合うには少々心が浄化されすぎてしまっていた(笑)とはいえとりあえず自席に戻り演奏を聴く。冒頭のトランペット・ソロは首席の高橋さんで、一箇所惜しかったけれども明晰な彼らしい優れたソロ。その他管のソロも完璧ではないにせよまずまずだったが、どこかオーケストラの響きの焦点が定まらず不思議な印象を受ける。原因を探ってみると、どうやらそれは小泉さん特有の大振りな指揮にありそうだ。独墺系のどっしりした音楽において太い流れを邪魔しない彼のタクトは、どうもフランス音楽のように細かなスパンで音楽の表情が変わっていく種類の音楽には向いていないように思える。また先振りが結構多いので、オーケストラもおっかなびっくり出てしまい、結果としてアインザッツの明晰性が失われていた。もっとも、重厚な牛車(ブィドロ)あたりから両者の呼吸がようやく一致し、いつもの都響らしい安定感のある響きが戻ってきた。バーバ・ヤーガ以降の盛り上がりはお約束だが、小泉さんは打楽器のずらしもテンポのタメもほぼ無しであくまでも生真面目に全曲を締め括った。これはこれで潔いが、自分の好みとは少々異なる。都響は先述の通り水準を保った演奏だったが、一点仰天したのは首席Trbの小田桐さんが牛車のユーフォニアムソロを兼務で受け持っていたこと。ユーフォニアム専門の奏者とはまた違った味のあるソロで、貴重なものを聴けた。



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takupon68 at 10:21│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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