2015/2/19
東京二期会オペラ劇場 ジュゼッペ・ヴェルディ『リゴレット』オペラ全3幕
@東京文化会館

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」(全3幕)

マントヴァ公爵:古橋郷平
リゴレット(公爵に仕えるせむしの道化):上江隼人
ジルダ(リゴレットの娘・16歳):佐藤優子
スパラフチーレ(ブルゴーニュ生まれの殺し屋):ジョン・ハオ
マッダレーナ(スパラフチーレの妹):谷口睦美
ジョヴァンナ:与田朝子
モンテローネ伯爵(チェプラーノ伯爵夫人の実父):長谷川寛
マルッロ(公爵の廷臣):加藤史幸
マッテオ・ボルサ(公爵の廷臣):今尾滋
チェプラーノ伯爵:原田勇雅
チェプラーノ伯爵夫人:杣友惠子
マントヴァ公爵夫人の小姓:小倉牧子
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:アンドレア・バッティストーニ

その指揮に触れたあらゆる人が「天才!」と異口同音に口にする指揮者、アンドレア・バッティストーニ。自分は今回のリゴレットが”初・バッティ体験”となったが、想像以上の凄まじさだった。指揮者に対してこれほどの衝撃を受けたのは、インバル、パーヴォ・ヤルヴィを初めて聴いた時以来かもしれない。まず公演前に、彼がイタリア文化会館で行ったリゴレットに関する講演のレポートを読んで驚愕する。何故20代という若さでこれほどまでにイタリア・オペラの根幹を理解した語りができるのだろう?トスカニーニ以来、100年に一人の天才という評も納得がいく。彼を今日本のオーケストラで聴けるのは紛れも無く僥倖だ。
バッティストーニがタクトを一閃させると、オーケストラ・合唱団は憑かれたかれたように奏で、歌う。単なるバトン・テクニックの問題ではなく、あらゆるジェスチュアや彼の呼吸までもが演奏者を刺激してしまうのだと思う。しかも彼の場合、頭で考えて棒を振っているというよりは表現が本能的に出てきているのではないか、とすら感じさせる。激しい大音響から厳粛な弱音箇所まで、ピットの中から響いてくる音楽の全てに必然を感じるのだ。
オーケストラの雄弁さに比べると歌手は少々厳しいものがあったかもしれない。恐らく初日ゆえの緊張によるものだと思うが、ここの所充実したアンサンブルが続いている二期会「らしくない」舞台だった。(特にジルダ・・・)そんな中タイトルロールの上江さんは一人気を吐き、苦悶するリゴレット像を明快に提示していた。邦人歌手で聴いたヴェルディ・バリトンとしては表現・声量ともに堀内さんに匹敵する圧倒的な素晴らしさだったように思う。有名なCortigiani, vil razza dannata(悪魔め、鬼め)ではバッティストーニが猛烈にテンポを煽り、凄まじい高速で始まったが全く動じない渾身の歌を披露してくれた。マントヴァ公も悪くなかったが、高音→低音、強弱の推移の際に歌のテンションも一緒に下がってしまうのが気になった。あまり出番の無い役だが、殺し屋の妹マッダレーナの谷口さんは色っぽい歌唱を聴かせてくれてよかった。
演出はパルマとの提携とのこと。幕が開くとともに黄金色の公爵邸が広がり、聴衆は一気に引き込まれる。第3幕の居酒屋での立ち聴きなども位置関係がよく分かるようになっており、比較的簡素ながらも押さえどころを押さえた舞台装置に満足した。

結果的にバッティストーニの才能に打ちのめされたが、恐らく複数回公演のうちにどんどん良くなっていくと思う。出来ることなら別キャストでも観たかった。