2015/1/25
藤原歌劇団創立80周年 2015都民芸術フェスティバル参加公演
ヴェルディ作曲オペラ3幕<字幕付き原語上演>ファルスタッフ
@東京文化会館

ヴェルディ:歌劇「ファルスタッフ」(全3幕)

演出:粟國淳
ファルスタッフ:折江忠道
フォード:森口賢二
フェントン:中井亮一
アリーチェ:佐藤亜希子
ナンネッタ:清水理恵
クイックリー夫人:牧野真由美
メグ・ページ夫人:日向由子
カイウス:所谷直生
バルドルフォ:曽我雄一
ピストーラ:小田桐貴樹
合唱:藤原歌劇団合唱部
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:アルベルト・ゼッダ

シェイクスピアの喜劇を題材にとったヴェルディ最後のオペラ作品。ロッシーニの権威で、昨年の東フィル定期への客演で大いに感銘を受けたアルベルト・ゼッダ翁(御年87歳!)がヴェルディを振るとあって興味津々で観に行った。

膨大な台詞が文字通りひっきりなしに繰り出され、登場人物同士の丁々発止のやりとりが続くこの作品は、ヴェルディ歌いにとっての最難関だという。確かに、声楽的に破綻なくアンサンブルを成立させながら、細やかな演技を交え、なおかつシェイクスピアのエッセンスも含ませるのは熟達の名歌手にとっても至難の業だろう。その点、今回の歌唱陣は健闘していたと言ってよいのではないだろうか。特にタイトル役の折江忠道さんが群を抜いて素晴らしく、彼の存在感が舞台のグレードをどれだけ高めたか分からない。
粟國淳の演出はオーソドックスの極みで、やや守りすぎな印象も受けたが、人物同士の小芝居の細やかさに拘りが感じられた。ファルスタッフと名を偽ったフォードが絡む場面(第2幕)などをはじめ、日本の公演にしては珍しいくらい頻繁に笑いが起きていたのはひとえに演劇的で分かりやすい演出によるものだろう。
だが今回最大の功労者はゼッダ/東フィルの引き締まった快活な音楽だろう。日本におけるオペラ上演では未だにオーケストラが軽視されている気がしてならないのだが、ゼッダの信じ難いほどの闊達な指揮は上演自体に前進するエネルギーを与え、歌手のアンサンブルをもしっかりとサポートしていた。ピットに入った東フィルはいつだかの「ファウストの劫罰」(指揮:プラッソン)の時とは比べ物にならない豪快な鳴りで、アンサンブルも十全、トランペットのまっすぐな響きはイタリアのオケを髣髴とされたほど。素晴らしい演奏だった。

藤原歌劇団創立80周年の記念シーズンもこの公演を以って終了。来シーズンには今回のゼッダ翁を再び迎えて貴重な「ランスの旅」を取り上げるし、佐藤正浩氏指揮の「仮面舞踏会」というワグネリアン垂涎の(笑)公演もある。楽しみ。