2015/1/23 リントゥ/都響による一柳慧新作、ルトスワフスキ、シベリウス2015/1/25 藤原歌劇団「ファルスタッフ」(ゼッダ/東フィル)

January 25, 2015

2015/1/24 ゲッツェル/神奈川フィルのブルックナー9番

2015/1/24
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第305回定期演奏会
@横浜みなとみらいホール

コルンゴルト:組曲「シュトラウシアーナ」
R.シュトラウス:4つの最後の歌
ブルックナー:交響曲第9番(ノヴァーク版)

ソプラノ:チーデム・ソヤルスラン
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:石田泰尚
指揮:サッシャ・ゲッツェル

ゲッツェル月間の集大成となる充実のプログラム。ブル9がメインで「4つの最後の歌」を置けば普通はプログラムは終わるが、シュトラウシアーナを置いてしまう神奈フィルは凄い。毎回2時間超えで演奏内容も素晴らしいのだから・・・。ちなみに、3つとも作曲家の最晩年の作。
それにしても、シュトラウシアーナは前座にしては贅沢すぎる選曲だ!甘い甘いウィーン菓子そのもののサウンドに引き込まれる。滑らかなフレージング、絶妙なテンポの伸縮はまさにウィーン人ゲッツェルの真骨頂。完全にリラックスしつつもオーケストラを見ている。ポルカでのシャンパンの泡が弾けるような響きも素晴らしい。
続く「4つの最後の歌」には個人的偏愛があるので、冒頭数小節を聴いただけで条件反射的に泣けてきてしまうのだが、それを差し引いても今日の演奏は温かく、いつまでも印象に残るであろうものだった。重層的で陰りのある弦の響きが全曲を支配し、ホルンや木管のふくよかなソロもあまりに耽美的。シュトラウス最晩年の黄昏の心象風景を確かに体感し、涙が止まらなかった。。ソプラノのソヤルスランはトルコでポストを持つゲッツェルの秘蔵っ子だろうが、唖然とするような美貌とスタイルの持ち主で、カーテンコールの所作を含めてあたかも19世紀から抜け出てきたような雰囲気がある名花。(ロビーで終演後見たときは今風のオネーチャンでしたがww)その声は無理がなく上昇音型も伸びやかで、ソプラノにしては低音域に凄みがあったのが印象的。彼女のドイツ語も美しく、ずっと歌詞を口ずさんでいたゲッツェルの繊細なリードもあって一層歌いやすそうだった。またすぐにでも聴きたい!東京春祭などで招聘しないだろうか。
そしてメインプロのブルックナー9番。最高潮に高まった期待は裏切られることはなかった。ウィーン・フィル在籍中にゲッツェルがこの曲を弾いたことがあるかは知らないが、冒頭から耳を疑うほどに美しい弦のトレモロが最弱音で響いてきた。先ほどのシュトラウスでも感じたことだが、合わせようと思って合わせた直接的な音圧というよりは、ゲッツェルのタクトに楽員一人一人が反応して出した音が結果的に合わさり、深い味わいのある音が立ち昇るといった趣。「アンサンブルを多少犠牲にしてでもよく歌うことを選択し、結果としてしなやかな演奏になる」ということはあるが、今日の神奈フィルの弦は両者を達成してしまっていた。これは驚異的・奇跡的(失礼!)なことだ。これほどの素晴らしい弦を得たブルックナー演奏の貴重さは、多少の瑕があっても全く揺るがない。木管では特にオーボエの虚無的な旋律が素晴らしく、2楽章トリオは魅了された。金管群も力に溢れ、特にホルン9本(8本+アシ1)の響きの深さは昨年の読響をも上回る。神戸さんのティンパニは今日はそれほど突出せず、ノーアタックでのトレモロなのでオーケストラを力強く下支え。ゲッツェルはテンポを結構動かしていたが、基本的に楽節単位での変化だったため、いやらしさは皆無。どっしりと構えた荘重さが勝った。難物である終楽章に入ってやや音楽の密度が薄れ、コーダの終息感をそれほど感じなかったのは若干惜しかったが、彼の年齢を考えれば素晴らしい成果。一流演奏者としての経験から生み出された、極上の弦の歌わせ方だけで8割方満足してしまった。
自分はウィーン・フィルを一度だけ聴いたことがあるが(2010年、プレートル指揮)、神奈フィルの弦からあの独特の典雅なふわりとした響きを聴けたことを、正直未だに半分信じられずにいる。それほどに衝撃的な体験だった。何という恐ろしい指揮者!
開演前のプレトークでゲッツェル自身が語っていた通り、彼と神奈フィルの旅は来シーズン11月の定期演奏会へと続く。継続的に取り上げているコルンゴルト、次は「シンフォニエッタ」。次が3年間の集大成なんて言わず、来々シーズン以降に超名曲・「交響曲嬰ヘ調」を期待してもいいのかなぁ!いいですよね!



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takupon68 at 11:14│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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2015/1/23 リントゥ/都響による一柳慧新作、ルトスワフスキ、シベリウス2015/1/25 藤原歌劇団「ファルスタッフ」(ゼッダ/東フィル)