2014/9/3
読売日本交響楽団 第10回読響メトロポリタン・シリーズ
@東京芸術劇場

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番
~ソリスト・アンコール~
ベートーヴェン:バガデル「エリーゼのために」
R.シュトラウス:アルプス交響曲

ピアノ:アリス=紗良・オット
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:萩原尚子(ゲスト:ケルン放送響コンマス
指揮:コルネリウス・マイスター 


前半のベートーヴェンの協奏曲、舞台上は目にも華やかに彩られた。TV出演も話題の人気美形ピアニスト、アリス=紗良・オットに加え、若手注目株(しかも爽やか系イケメン)のコルネリウス・マイスターが共演した。愛らしい曲を手の平の上で転がすように奏でてゆくアリス(幾分硬質なタッチではあったが)に対峙するオケはピリオド風味の効いた切れ味の良い響き。ティンパニもバロック仕様のようだった。中間楽章の深みは更に求められようが、両端楽章の溌剌とした活きのいい音作りが聴けただけで個人的には充分満たされた。アンコールの「エリーゼのために」もコロコロとしたタッチが曲に合い、シックな味わいを醸していた。
後半は大曲「アルプス交響曲」。単なる巨大交響詩ではない。ニーチェのアンチクライストの考えに影響されてロマン派最後の巨匠リヒャルト・シュトラウスが描いた自然讃歌。絶対音楽の観点からは眉を顰められるに違いない、描写音楽というジャンルに位置するにも拘らず、堂々と「交響曲」と掲げたシュトラウスの意気や如何に。若きC. マイスターは、自然描写の動機の数々を精密に再現していくというよりは全体としての曲の流れを重視してスケール感を出すことに重点を置いていたようだった。キューは多くないにしろ、やりたいことは分かる。各場面がデジタル的に瞬時に切り替わるのではなく、上空からゆったりと俯瞰するような滑らかな場面転換を実現しようとしていた。その路線にオケはしっかりと共感したのだろう、当夜の演奏で指揮者の方針は8割方成功していたといえる。では残りの2割は?一回きりの公演の宿命か、曲の中盤までは場面転換にぎこちなさが感じられるところもあった。しかし全体としてはマイスターのやりたいことは充分伝わってきた。彼の試みが概ね成功に終わったことは、終演後の楽員の指揮者への賛辞を見ても明らかだった。
この大曲において、読響は磐石の出来を示した。管楽器群の歌心とスタミナを両立したプレイ(特にホルン、バス・トロンボーンはこのオケならではの膨らみ!)もさることながら、弦楽器のうねりを伴う重厚な合奏はドイツ音楽にうってつけのものだった。また、打楽器陣の中ではティンパニ客演奏者の植松氏(N響)の歯切れよい強打に感銘を受けた。合奏力・指揮者への順応力の両面で、読響のレヴェルの高さをまざまざと見せ付けられた快演だった。