2015/4/26
東京ユヴェントス・フィルハーモニー 第9回定期演奏会
@第一生命ホール

ベートーヴェン:交響曲第1番
ベートーヴェン:交響曲第2番
シサスク:無伴奏混声合唱のためのベネディクティオ
シサスク:ミサ曲第3番「エストニア・ミサ」より サンクトゥス
シサスク:左手のためのピアノ協奏曲「星の灯台」 
〜アンコール〜
シサスク:カシオペア(作曲家ピアノ・ソロ)
シサスク:ミサ曲第3番「エストニア・ミサ」より サンクトゥス(作曲家指揮)

ピアノ:舘野泉
合唱:東京ユヴェントス・フィルハーモニー合唱団
合唱指揮:谷本喜基
管弦楽:東京ユヴェントス・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:坂入健司郎

年初に充実のマーラー「復活」を聴かせてくれた坂入さん/東京ユヴェントス・フィルによるベートーヴェン・ツィクルスが始まった。 「復活」はクレンペラー作品との組み合わせだったが、今回もエストニアの作曲家シサスクとの斬新なカップリング。秘曲と組み合わせること自体が目的化しておらず、意義深いものになっているのが何より素晴らしいではないか。
ベートーヴェン2番のD-dur、シサスク作品に頻出するD音ー。D音の行き着く先はツィクルス最終回のOp. 125「合唱」だろうか、はたやブルックナーの9番だろうか。坂入さん/東京ユヴェントスが見据える未来まで垣間見えるような希望に満ちたD音プロだ。

前半のベートーヴェン2曲だけでコンサートをひとつ聴いたに等しい満足度を覚えた。Vnは対向配置、Cbはずらりと後方一列に並ぶ。中規模ホールでの演奏に最適な室内オケ編成で、2本ずつの木管は名手揃い。
1番では若干指揮者とオケの歯車が噛み合うまでに時間を要した感もあったが、隠れたアクセントの強調やキレのある進行は魅力的だった。
続く2番では坂入さんが登場時にスコアを忘れる(笑)客席の雰囲気が一気に和らいだ。気を取り直して台に上がっててからの彼は文字通り獅子奮迅の指揮で、難聴からの精神的克己を果たそうとするベートーヴェンの荒ぶる気概が現代に蘇る。ハイリゲンシュタットの遺書、というとエロイカばかりが話題に上がるが、この2番も転換期の重要な作品なのだ。両端楽章のザッハリッヒな弦の猛進・鬼気迫る迫力は言わずもがなだが、中間楽章で落ち着きを取り戻しての木管群の芳醇な歌も実に美しかった。特にFlトップは素晴らしい。終楽章は作り込みの細かさを感じるも、神経質にはなっておらずあくまで純粋な音楽的発展といった趣。
特に2番に関してだが、合奏やピッチの精度も相当に高く、LFJで無料演奏でいいの?と思ってしまうような濃いベートーヴェン演奏だった。今後の番号が俄然楽しみになる。

後半のシサスク特集ではまずオケではなく16人のSATBによる無伴奏合唱が登場、驚異的な声部のクリアさにより温かな情感がホールを包み込んだ。続くピアノ協奏曲の世界初演ではTrbやTb、テューブラーベルやボンゴ、和太鼓を交えたやや大きめのオケをバックに被献呈者の舘野さんが独奏を披露。正直なところご高齢で左手のみの演奏だったので多くの部分がオケに埋もれていた感はある。
シサスク作品は初めて耳にしたが、19世紀頃からヨーロッパ各地で勃興した国民楽派の末端に位置付けられそうな音楽だ。技法的に目新しいところは皆無で、否定的見方をすればやや陳腐。だがエストニアの民俗色にオリエンタリズムを混ぜ込んだような作風は極めて分かりやすく、日本人の我々の郷愁をも誘う箇所もある。東京ユヴェントス・フィルは彼にオーケストラ付き合唱作品を委嘱するそうだが、素朴かつ熱い音楽が聴けそうだ。
カーテンコールで登場した作曲家は満足げな笑みを浮かべており、アンコールとしてピアノ・ソロで自作自演を披露し、舞台に上がった合唱団を指揮してサンクトゥスを再度演奏した。

会場が一体となってユヴェントスの築いた音楽の環に魅せられ、温かな余韻を残す忘れ難い演奏会となった。