2015/5/9
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団  第289回定期演奏会
@東京オペラシティ・コンサートホール

ブルックナー:交響曲第8番(ノヴァーク版)

管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:戸澤哲夫
指揮:飯守泰次郎

14時の開演に先がけて13時25分から飯守先生によるプレトークがあった。 
前回のこのシリーズの「7番」の時と同じくピアノを弾きながら順を追って解説してくださるのだが、前回と違う点は隣にシティ・フィルの指揮研究員の横山奏さんがいらっしゃったこと。この方はお相手と言うよりは、熱弁を振るう飯守先生に「巻き」を入れてどうにか開演に間に合わせる役割だった(笑)

トーク終了後しばらくして会場に戻ってステージを眺め、16型通常配置でHrは9本か・・・などと確認していると、突如爆音が響き渡る。一瞬辺りは騒然となり、何事かと思ったが、どうやら近くの方によると3階L側バルコニーから手荷物を落とされた方がいたらしい。瓶状の何かだったようで、速やかにお掃除の方が出てこられて処理がされたが、ここ最近日フィル定期での花束、今回の瓶と落下騒動が多い。特に今回はHr奏者の頭上にあたる位置であり、たまたま席が無人だったのが幸いだったが事故すれすれの事態だ。何か対策はないものかと思うが、ひとまずは呼びかけに頼るしかないのだろうか。

前置き(?)が長くなった。今回はなんといってもカペルマイスター飯守の振るブルックナー「8番」である。
長年の関係を保つこのコンビならではの、濃く自在な演奏であった。おそらく他の在京オケではここまで掘り下げることはまず不可能だろうし、(失礼ながら)お世辞にも見易いとは言い難い飯守先生の棒をシティ・フィルほど丹念に汲み取ってはくれまい。 
第1楽章が始まってしばらくの微細なテンポの揺れには、お互いの緊張度や手探りな様子を感じさせたが、徐々にその揺れが音楽の振幅と一致してくる。第2楽章では各楽器が存分に主張し、ティンパニの粗野な活躍(元・読響のヴェテラン菅原さん!)も決まり、前半楽章を充実のうちに締め括る。
演奏者・客席ともにどっと息を吐き出して体を整えてから始まった第3楽章以降は、更に演奏の次元が上がったように思われた。 まさしく悠久の時を感じさせる深い深い音楽の呼吸にシティ・フィルの弦楽が素晴らしく反応し、若い奏者を多く擁する木管陣も各所で活躍。WagTubとHrの響きもなかなかで、頂点に向かって飯守先生はぐいとテンポを上げて熱量を高めていく。続くコーダの寂寥感も素晴らしい。轟然たる熱狂を引き出しておいて、引き際はいっそう入念に形作るのは流石に円熟の名匠の手腕である。
終楽章は入りは最高、ただその後の各主題提示にはそれほど変化がなく、若干凡庸に感じる。特に第3主題の扱いは雑で、基調テンポが速いためティンパニの刻みが滑稽にすら聴こえてしまうのは勿体無い。再現部回帰直前のTrp.が大コケしたのは残念だが、このあたりからHr群はじめ他の金管もやや疲れが見えてきた。ここまでパウゼをたっぷりとって響きの余韻を味わわせてくれていたのだが、全曲の大詰め、肝心のコーダ直前のパウゼは意外にも短い。あっさり突入したコーダは全軍突撃のような凄みはあれど各楽章主題が一斉に回帰する終結感は最後まで感じられず、唐突に曲は終わってしまった。

うーむ、第3楽章まではかなり満足していたのだが―第4楽章の造形がことごとく自分の好みではなかったし、飯守先生らしからぬ粗さを感じさせた。まあ、テンポの細かな収縮やデモーニッシュなトゥッティが完全にヴァーグナー寄りなのは明白で、この作曲家に生涯敬意を表し、編成的にも最も豊麗さを得た「8番」なら今回のアプローチは「アリ」なのだが。シティ・フィルは最後まで渾身の演奏を披露してくれた。大拍手!