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May 27, 2015

2015/5/27 ヘルマン・メニングハウス ヴィオラ・リサイタル

2015/5/27
ヘルマン・メニングハウス ヴィオラ・リサイタル
@横浜市栄区民文化センターリリス

ヘンデル:オンブラ・マイ・フ
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第2番
〜アンコール〜
ヘンデル(ハルヴォルセン編曲):パッサカリア
ー休憩ー
ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第2番
〜アンコール〜
シューベルト:万霊節のための連禱

ヴィオラ:ヘルマン・メニングハウス
ヴァイオリン:水谷晃
ピアノ:諸田由里子

先日ムジカーザでの四重奏に続き、ヘルマンさんのリサイタルへ。
ヴィオラという楽器の多層的な魅力をたっぷり満喫した。 ヴァイオリンとの二重奏、ピアノ伴奏とそれぞれ見せる表情が異なり、まったく飽きることがない。

前半ではやはりアルペジョーネ・ソナタの暗鬱な、しかし心の奥深くまでそっと入り込むような音楽に打たれた。この曲は指定通りアルペジョーネでの演奏のほか、チェロ、ギター、フルートなど様々な楽器で演奏されるが、自分はこの日聴いたヴィオラ版が一番好きだ。生演奏だからというのは勿論あるけれど、チェロだとやや低音部が重厚すぎ、明暗のコントラストが強烈に付き過ぎてしまうような気がする。ヴィオラの仄暗い音色が当時のシューベルトの心にあまりにピッタリと合うのだ。

続いてのモーツァルトによる二重奏曲は初めて聴いた作品だったが、一瞬にして魅了されてしまった。普段東響のコンマスとして活躍する水谷さんは、熱っぽくもしなやかなリードが素晴らしい音楽家だけれど、ソロも本当にいい。以前ニキティンとのデュオを聴いた時もよかったけれど、身長差が約30cm(!)もあるヘルマンさんに大して堂々とご自分の音楽を提示しておられる。どちらかが強力に主導するというデュオではなかったけれど、それぞれの持ち味が絶妙にブレンドされた味わい深い音楽だった。フレーズ単位と言わず、一音単位で二人の呼吸に合わせて音楽のニュアンスが変化していくのには驚くばかり。終楽章ではヘルマンさんが珍しく(笑)名バリトンのような美音で音楽をリードし、変奏の妙が繰り広げられる。
アンコールはほとんどハルヴォルセンの作曲によるヘンデル「パッサカリア」。ここに来てお二人の技量は全開、息もつかせぬ音楽の凄まじい運びに唖然とする。そしてヘルマンさん、当たり前だけど上手い。どんなに激しても音楽が粗くならないのだから。華やかだった。

最後はしっとりとしたブラームスのソナタ。クラリネット・ソナタの作曲者による編曲版だけれども、やはり僕はヴィオラで奏でられる方がずっと好き。中音域の渋い音が、クラリネット以上にブラームスに適性があると思う。 晩年のブラームスの酸いも甘いも噛み分けたような音楽を理解するようには、自分はまだ若すぎるのかも知れないけれど・・・。終楽章の変奏曲は第4交響曲の枯淡より一歩進んだ境地に思われ、忘れ難い印象を残した。

リサイタルを締めるのはムジカーザでも演奏したシューベルトの「リタナイ」。ヘルマンさんとのリサイタルでは必ずこの曲を最後に演奏する、と由里子さんが仰っていたけれども、それは間違いなく最高のチョイス。ムジカーザでは崎谷さん、裕康さんが控えめながら加わって披露されたリタナイ、自分としては今回のVaソロのみの演奏の方が更に込み上げるものがあった。お二人には申し訳ないのだけれど、ヘルマンさんのVaとシューベルトの親和性が凄すぎるのだ。ここをどう聴かせよう、という解釈めいた音楽でなく、ただ淡々と音楽が紡がれるのみ。由里子さんのピアノも、ヘルマンさんと同化して無の境地へ。あまりに私情を排した音楽に再び涙腺が緩む。

来て良かった。最後の「リタナイ」を聴きに、これからもヘルマンさんの音楽を聴き続けたいと心から願う。


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takupon68 at 16:34│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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2015/5/23 ウルバンスキ/東響 ルトスワフスキ、ドヴォルジャーク、スメタナ2015/5/28 サーリアホ:歌劇「遥かなる愛」日本初演