2015/6/21 サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン フィナーレ2015/6/27 シェハタ/新日フィル クーセヴィツキー、ドヴォルジャーク

June 26, 2015

2015/6/26 モルゴーア・クァルテット ノヴァーク、クラーサ、池辺晋一郎、ヒンデミット

2015/6/26
モルゴーア・クァルテット 第42回定期演奏会 ここぞとばかりに、モルゴーア!
@浜離宮朝日ホール

ノヴァーク:弦楽四重奏曲第3番
クラーサ:弦楽四重奏曲
池辺晋一郎:ストラータⅨ(弦楽四重奏のために)
ヒンデミット:「さまよえるオランダ人」序曲―下手くそな温泉楽隊が朝7時に噴水の周りに集まって初見で演奏したような
~アンコール~
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番 第2楽章

弦楽四重奏:モルゴーア・クァルテット

ヴァイオリン:荒井英治、戸澤哲夫
ヴィオラ:小野富士
チェロ:藤森亮一

ショスタコーヴィチ、バルトークらを得意とし、プログレの弦楽四重奏版の演奏にも取り組む異才集団・モルゴーア・クァルテットの定期を聴いた。前回は「そうだ! ウィーンを甘くみてはいけない。」と題し、一見なじみ深い作曲家揃いのように見えて侮れない選曲、演奏に痺れた。
それが今回はどうだろう!前回がネタの下に罰ゲーム級ワサビを忍ばせた「ロシアン・ルーレット寿司」だとすれば、今回は最初からデス・ソースなりハバネロなりが客席に提供されているのだ。ノヴァーク、クラーサ、池辺晋一郎、ヒンデミット―他のどの団体がこんな冒険的プロを組むだろうか?

前半はノヴァーク一曲と短いな、と思っていたが曲の深遠さに成る程納得。マルティヌー風味も感じさせつつ、聴衆に一切媚びない晦渋な音楽はかなり精神にこたえる。終演後に荒井さんが話していたが、この曲をどうしても演りたくて今回のプログラムが考案されたのだとか。

そして、今夜最大の収穫は後半のクラーサ「弦楽四重奏曲」だった。乗降・下降音型がアーチ状、無窮動的に展開する中ヴァイオリンやヴィオラがソロ的に現われ、ウィンナ・ワルツ風の甘美が横切った次の瞬間にバチンと首が飛ぶような衝撃音。兎に角只事ではない凄曲。美醜を見事に表現し切った演奏も特筆モノ!最後のヒンデミットは下手くそっぷりを懸命に表現する演奏者たちが微笑ましくも凄腕で、ナチとヴァーグナーへの痛快な皮肉をたたきつけた。

相変わらず密度の濃い音楽を届けてくれるモルゴーア。そのプログラムは一見ニッチで、しかしながら戦争や震災といった災禍と音楽の関わりを透徹した視点で見据えた素晴らしいものだ。演奏のクオリティも、今回は1stの荒井さんがいつにもまして熱の入ったプレイを披露して全体を強力に牽引した。アンコールで予告されたショスタコーヴィチ全曲演奏をはじめ、今後とも目が離せない!

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takupon68 at 23:21│Comments(2)TrackBack(0)公演評 

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この記事へのコメント

1. Posted by ドブ板   September 25, 2015 13:07
このコンサートについて他にほぼ言及がなかったので不可解でしたが、こちらに的確な評価がされていたので、うれしくて投書させていただきます。私もこのコンサートの曲目にいたくそそられて行きました。特にノヴァーク、予て民族系のマイナーな作家と軽く考えておりましたが、独特の精神世界を表現しており感動しました。悲劇的なクラーサ、でもどこか生きる希望を湛えているようでした。池辺氏の曲を入れたのは、これらの延長上に今日の日本の抑圧的状況に思いを及ぼす意図があったのではと思います。ヒンデミットも勿論その文脈上にあるのですが、バッハ以来のドイツ音楽の伝統を継承していく者として、先駆者たるワーグナーを嗤って皮肉ることがいかに彼をして血を滴らせることか、私は思いを致さなければならないと思いました。あの日コンサートにいた私も、単に彼我の抑圧を嗤って皮肉ることに他者的にニヤニヤするのでなく、ノヴァークやクラーサの思いをわが思いとすべきでした。長くなり恐縮です。
2. Posted by 平岡 拓也   September 25, 2015 18:58
ドブ板さま、ありがとうございます。

モルゴーアは常に深い意図を持ったプログラム、演奏を聴かせてくれます。プログレを演奏するのも、それ自体が目的となっているのではなく時代の必然と言えるでしょうね。

年末のショスタコーヴィチ、通し券を購入しました。今から楽しみであると同時に、聴き終えた時が少し怖くもあります。

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