2015/7/16
東京交響楽団 第632回定期演奏会
@サントリーホール

ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
バルトーク:ピアノ協奏曲第1番
ベートーヴェン:交響曲第5番

ピアノ:デジュー・ラーンキ
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:水谷晃
指揮:ジョナサン・ノット

ノット/東響の定期。先日のオペラシティシリーズの流動的なプログラムとは好対照を成す、大地に根を張ったような力強い作品群が並ぶ。

まず一曲目のストラヴィンスキー、ノットはN響客演時にもこの曲を取り上げたことがある。東響の管楽器奏者がずらりと顔を揃え、冒頭から素っ頓狂な音響がホールに響く。同じ作曲家の「春の祭典」の土俗性を凝縮して放ったような、不思議な魅力のある音楽だ。コンサートの冒頭から管楽器にハイトーン連発はさぞ大変だと思うが、東響は流石の水準で美しく表現した。

続いてのバルトークはピアノ協奏曲第1番。ティンパニはじめ打楽器群は指揮者の正面、つまり管の前まで引き出され、打楽器的な音塊が目立つピアノとの対比が強調される。打楽器vs打楽器というわけだ。演奏自体は思いの外強靭さより優美さを感じさせるもので、ダンディな装いのラーンキのソロは手慣れたもの。ノットはストラヴィンスキーに続き近現代音楽における抜群の強みを発揮、完璧に振りさばいていたが、肝心のオケの打楽器群には一層の切れ味を求めたかった。

近現代の名作に続き最後に提示されるのは、交響曲の獅子ともいうべき傑作中の傑作・ベートーヴェン「第5番」。
ノットはここに来てかつて見たことがない程の激烈な没入ぶりで指揮した。彼がここまで唸り、吼える(!)のは相当に突き動かすものがあるのだろう。第4楽章の怒涛の進撃はまさに新時代へと駆け抜けるといった趣であった。
だがそこは才人ノット、勢いと熱気だけで終わるはずがない。むしろ彼らしい斬新な響きを次々と見せつけられた思いだ。第1楽章では鬼気迫る進軍の中で運命動機のリズム群が斬新な捉え方、中間楽章では一転してブルックナーの如き大胆な呼吸感とパウゼの活かし方。とにかくアイディアが溢れて仕方がないという印象を受けた。だが、彼の才人ぶりに仰天する一方、アイディアの取捨選択はあまりなされていないともはっきり感じた。その結果、ベートーヴェン5番の持つ理性を超えた超人間的な力は幾分薄められていたと思う。
オケは12型にコントラバスを一本足した形。編成が小さな分、一人一人の奏者の自発性がはっきりと演奏に反映され、表出力の大きなベートーヴェンとなっていた。その反面弦の響きの豊かさは若干犠牲となり、ドイツ音楽らしいふくよかさは演奏から感じなかった。これは勿論好みであるが、徹頭徹尾現代視点によるベートーヴェン解釈と言えるだろう。

とにかくノットの力強い指揮は圧巻、オケの内部からもリップサーヴィスなど一ミリもない絶大な賛辞が寄せられていた。これほど素晴らしいコンビが東京に存在するという事実に、ただ感謝するばかりである。