2015/7/17
東京フィルハーモニー交響楽団 第867回サントリー定期シリーズ
@サントリーホール

マーラー:交響曲第9番

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:依田真宣
指揮:尾高忠明

7月の東フィル定期は縁の深いマエストロ・尾高さんが指揮。自分がクラシック音楽への情熱を再燃させるに至った大きなきっかけがこのコンビなのだが、実演に接するのは案外久しぶりかもしれない。
尾高さんのマーラーは、震災直後にチャリティで読響を振った第5番、名フィルを振ってハードボイルドな熱演を聴かせた第6番以来。今考えると、いずれも大変端正な造形が印象に残っている。さて、第9番は如何に。

冒頭でゲシュトプフを奏するホルンがブレ、おやおやと思ったが―そこからのオーケストラは極めて安定。指揮棒を持たず、響を慈しむように柔らかく振っていく尾高さんの指揮に十分な共感を持って応じているのが分かった。燃えた時の東フィルが発揮する力には瞠目すべきものがあるが、今回は間違いなくそれだ。バッティストーニとの共同作業で得た熱気の余韻が未だに残っているのか、それとも老境に差し掛かろうとするマエストロ尾高への尊敬の念が高まっているのか。いずれにせよここ近年で聴いた東フィルの定期の中ではベストの水準を示したことは間違いない。弦5部トップ奏者の気合は物凄いし、金管群も曲に相応しい包容力のあるサウンド。特に1stホルンの健闘ぶりは感涙モノで、果敢に攻め続けているにもかかわらずブレない。それでいて歌心・音色の変化にも不足しないのだから文句なしである。
また、実地的な面で言えば第2楽章の後にチューニングを行ったのも良かった。この大曲ではどうしても一回の調整では厳しいからだ。コンマスの依田さんはオケを主導する感じではないが、ソロでは美音で魅了。

尾高さんはこれまでと同じく端正な構築美を示すのだが、マーラーが生への執着を爆発させるような熾烈な箇所では、躊躇なしに激しくオーケストラを鳴らしていく。厳然たる造形を作った上で、それを敢えて破る瞬間に全霊をこめる彼の指揮は、マーラーの第9番が持つ堅牢な造形美、20世紀音楽を見据えた先鋭性を同時に達成していた。素晴らしく誠実なマーラー演奏に大感謝!