2015/7/31
トッパンホール主催公演 日下紗矢子 ヴァイオリンの地平 2─古典
@トッパンホール

モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 K. 303
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番
パガニーニ:24のカプリースより 第9番、第24番

モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調 K. 526
シューベルト:ロンド ロ短調 D895
~アンコール~
シューベルト:アヴェ・マリア

ヴァイオリン:日下紗矢子
ピアノ:マーティン・ヘルムヘン

トッパンホールでシリーズを持ち、読響とベルリン・コンツェルトハウス管のコンマスをも務める日下さん。トッパンでのライヴCDやアルバム"Return to Bach"での毅然とした演奏も素晴らしいし、先日のテミルカーノフ指揮読響によるマーラー「3番」ではしなやかなリードも味わうことができた。とにかく尽きせぬ魅力を持つヴァイオリニストである。 

今回の古典派縛りのプログラムでは、それぞれの作曲家の描き分けが綿密に行われている。古典派と一口に言ってもモーツァルトとシューベルトは全く違うのだから当然といえば当然なのだが、聴衆にはっきりとそれを伝える意識を強く感じた。美音にゆったりと浸るというよりは、聴く側の能動的な参加を要求する。こういう刺激が尽きないアプローチは大好きだ。

モーツァルトの2つのソナタ、ベートーヴェン、パガニーニ、シューベルトの作品が取り上げられたが、最も感銘を受けたのはシューベルト。構えが大きく、それでいてどこまでも魂が飛翔してゆくような雄大な軽やかさを感じさせる名作であるが、日下さんとヘルムヘンは曲の通り駆け上るような白熱した演奏を展開した。それまでの演奏ではヴィブラートが最小限の使用だったのに対し、シューベルトでは「ここぞ!」という箇所で効果的に用いられる。それが感情の起伏を強調するようで一層の感銘を生む。

清新なフレージング、効果的なヴィブラートの使用で魅了した日下さんも素晴らしいが、ヘルムヘンのピアノがこれまた生気に富んでいた。これほど有機的に音楽が息づくデュオは、一瞬たりとも油断できないスリルがある。ヘルムヘン、日下さんの双方が仕掛け合い(仕掛けるのはヘルムヘンが多かったかも)、瞬発的に音楽の色合いが移りゆく。後日行われた彼のソロ・リサイタルも聴きたかった。

多面的に活躍する日下さんは、どこか日本人離れした大胆さと日本人的な細部への心配りの両方を兼ね備えているように感じる。これからも楽しみに演奏を待ちたい。