2015/8/23
読売日本交響楽団 第179回東京芸術劇場マチネーシリーズ
@東京芸術劇場 コンサートホール

ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲
〜ソリスト・アンコール〜
J. S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番より サラバンド

ドヴォルジャーク:交響曲第8番

チェロ:アンドレアス・ブランテリド
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:ダニエル・ゲーデ
指揮:下野竜也

夏はオーケストラの自主公演が減る。オーケストラも夏休みを取るわけだが、そんな中で読響は毎年比較的忙しく演奏会を行っている。スペシャル公演が追加されたりもするが、基本的には三大交響曲&協奏曲公演が恒例だ。
今年の「三大協奏曲」 はオケとの信頼厚い下野竜也が指揮。メンデルスゾーン・ドヴォルジャーク・チャイコフスキーの名曲で手堅い伴奏を務めたのだろうが、今年の夏はプラスアルファのマチネーが組まれた。それが今回の演奏会だ。

前置きがくどくなった。「三大協奏曲」で登場した三人のソリストの中でもとりわけ好評だったのがドヴォルジャークを弾いたブランテリド、さてどんな演奏を聴かせてくれるのかと興味が沸くところ。
冒頭のほの暗いクラリネットに始まりオーケストラは骨太な響きで盛り立てる。若いブランテリドがこの強面なバックにどう対抗するかと見守っていると、思いのほか気負いなくストレートな出だし。威風堂々とオケに向かうのではなく、爽やかで力みのない響き。ドヴォコンといえば民俗色プンプンの濃厚な歌い口が定番(?)だが、今風の若者はこういう風に弾くのかと新鮮に受け止めた。かと言って若い魅力だけということはなく、寧ろ年齢を感じさせない落ち着いた風格をも漂わせる。弱音でも音の芯が確かで、歌が痩せず滑らかに移行していくのがまことに好ましい。白熱度合いを増すバックのオケに接近する形で、楽章を追うにつれソロの雄弁さも増していった。
個人的に、かなり好みのチェリストかもしれない。肉声の如き切迫性を持つチェロの響きも嫌いではない(最近でいうとワイラースタイン)のだが、スマートさを以って楽曲の魅力を教えてくれるような彼の個性は貴重だ。

後半のシンフォニー、これは流石に下野さんの十八番と言うべき作品だろう。何せこのコンビはドヴォルジャークの交響曲全曲演奏を達成、レクイエムの名演も含めこの作曲家に関しては一家言を持っている。改めて第8番を聴くとあれば期待も高まるというものだ。
下野さんは前半にも増して緻密でがっしりとした構築を披露。作品が持つ芳醇な歌を適度に引き出しつつ、それに溺れることはせず全体のバランスを見事に統御した指揮だった。こういうバランス感覚においては、下野さんは国内において抜群のセンスを持っている。読響はストリングスの強靭さがいつになく見事、ほんの少しだけ指揮より前に出ようとするゲーデコンマスのリードは特徴的に思われた。彼がかつてコンマスを務めていたウィーン・フィルのキュッヒルを髣髴とさせるものがあるが、何か共通するメソッドがあるのかもしれない。弦楽5部に比べると木管の弾(はじ)け具合はやや控えめで、結果としてストリングスの交錯がいつになく鮮明に印象付けられることになった。金管、ティンパニもよく鳴る。
終楽章のコーダなどただでさえ痛快な音楽だが、ここにきて下野さんがオケを一気に開放するものだから盛り上がることこの上ない。下世話な話だが、三大協奏曲を終えてから1日のリハーサルでここまで仕上げられるものだ。

三大協奏曲のオマケかな、と斜に構えていたらとんでもない。素晴らしいドヴォルジャーク・マチネだった。流石は下野さんである。