2015/9/20
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第312回定期演奏会
@横浜みなとみらいホール

モーツァルト:交響曲第39番
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版)

管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:石田泰尚
指揮:児玉宏

大阪響との素晴らしいプログラミング、演奏で知られるマエストロ・児玉宏さんが神奈フィルに客演。関東で氏の名前を見ることは決して多くないが、今秋はオペラシティでもブルックナー9番を指揮される。(オケは大阪響)これは聴きにいけないのだが、今回の神奈フィル客演を聴く限り相当見事な演奏が期待できそう。

モーツァルトは8型の小編成、児玉さんは指揮台も指揮棒も使わず奏者と近い距離で振った。視覚的にはいかにもピリオド系のサウンドが響いてきそうなのだが、ふんわりと立ち昇るサウンドは伝統的なモーツァルト像を想起させる。テンポもゆったりとしたもので、ともすればもたつきそうな運びであるが、神奈フィルの弦は安定しており純粋にリラックスして聴くことが出来た。今時珍しいスタイルだが、きちんと存在意義を感じた。

後半のブルックナーは14型。ブルックナーという作曲家はマーラーと並べて捉えられることが多く、16型の大編成で強靭な響きを求めるような演奏が多いのはその為だろうか。(ここである指揮者の名前がすぐに浮かぶ)児玉さんのブルックナーはオーストリアの片田舎を強く感じさせ、決して押し付けがましくならない。ヨーロッパ人以上のヨーロッパ的感覚の持ち主であると感じた。
朴訥で極力インテンポ志向の音楽なのだが、ただ流しているだけでは決してない。スケルツォや終楽章ではここぞという時のギアの踏み込みが適切だったし、第2楽章の切々とした歩みで弦のピッツィカートを強調させたのは意志的だった。「ロマンティック」という漠然とした雰囲気で成り立っている音楽ではなく、ブルックナーの信仰心はしっかりと書き込まれている、とマエストロが語っているようだった。深い呼吸で進んだ音楽は75分ほどになり、十分なパウゼを経て訪れるコーダは実に感動的。テンポこそ中庸だったが、空間が一気に広がるような感慨があった。
神奈フィルは全体を通して安定。個人技の巧さでは在京トップクラスに劣ると思うが、アンサンブルの充実度は素晴らしい。弦セクションは前半に引き続き児玉さんの意図をしっかりと具現化していたし、ホルンをはじめとする金管群もブルックナーらしいサウンドだった。

1月のゲッツェルとは全く違うものだったが、神奈フィルで素晴らしいブルックナー体験が再び出来て大いに満足。こういう演奏は現代にあって貴重である。