2015/9/24
東京都交響楽団 第793回定期演奏会Aシリーズ
@東京文化会館

ミャスコフスキー:交響曲第10番
ナッセン:ヴァイオリン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
サロネン:Lachen verlernt(学ばざる笑い)

ムソルグスキー(ストコフスキー編曲):組曲「展覧会の絵」
~アンコール~
ムソルグスキー(ストコフスキー編曲):組曲「展覧会の絵」より
第3プロムナード~卵の殻を付けた雛の踊り

ヴァイオリン:リーラ・ジョセフォウィッツ
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:四方恭子
指揮:オリヴァー・ナッセン

 
オリヴァー・ナッセンが都響定期に登場。以前芸術主幹の国塩さんが講演で語ったところによれば、サントリーサマーフェスで彼のホルン協奏曲(独奏はバリー・タックウェル)を初演していて以来20年ぶりの共演で、楽員も待ち望んでいたのだという。文字通り(失礼!)、英国音楽界の大物だ。

今回取り上げられる自作は「ヴァイオリン協奏曲」。現代曲だが大変聴きやすく、爽やかで幻想的な印象すら与える佳曲だ。コントラバス8本と低音を強化しているが、重厚な印象は受けない。チャイムやチェレスタの夢幻的な響きと独奏ヴァイオリンが語り交わす第2楽章が大変スピリチュアルだった。独奏を務めたジョセフォウィッツはこの公演のためだけの来日で、全曲暗譜は勿論のこと完全に曲を手中に入れて圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。引っ掛かりの強い音を多用するのだが、その中の音色のパレットが至極豊富で惹きつけられる。テクニック的にも圧巻で、それはアンコールで披露されたサロネンの小品でも確かだった。なんという滑らかなフラジオレット!

自作を挟む形でミャスコフスキーの10番、ストコフスキー編曲の「展覧会の絵」が披露されたが、いずれもホルン8本を要する大編成。ちなみにナッセンは両曲録音があるし、ミャスコフスキーのアメリカ初演はストコフスキーが務めるなど縁があり、取り合わせの妙が感じられる。
ミャスコフスキーは交響曲ながら単一楽章、描かれている内容から言っても交響詩のようだが、主題展開が明快なのでやはりシンフォニー。「青銅の騎士」像ことピョートル大帝の銅像が貧しい官吏エヴゲニーを追い回す様が威圧的な低弦によりリアルに描かれ、この低弦は曲中何度も回帰する。曲全体を通して伝統的な管弦楽法と斬新な書法が入り乱れ、終局では救いなく投げ出される。とにかく、ナッセンの意気と都響の技量は目覚ましい。
後半の「展覧会の絵」は、おそらくラヴェル編の次に有名なストコフスキー版だが、それでも知名度・演奏頻度ともに限りなく低いだろう。(ゴルチャコフ版、ウッド版、アシュケナージ版などが控えているが・・・)
有名なプロムナードは弦楽により奏され、徐々にオーケストラに拡大されていく。ラヴェル編では距離を置いて牛車が迫ってくる「ブィドロ」も低弦により粗野に弾かれるなど(前半のミャスコフスキーのように!)、全体的に誇張的・戯画的な色合いが強まっている。音価の扱い、フレーズの削除や追加なども編曲者の裁量で自由に行われており、サイケデリックな面白さは格別だ。
巨躯ゆえに杖を持って歩行し、椅子に腰掛けて振るナッセンは決して大振りではないのだが、最小限の身振りでオケから弱音から最強音まで存分に引き出す。流石はヴェテランの技だ。都響も殆ど破綻なく驚異的。結果生み出された音楽は誇張もなく、純粋にストコフスキーの編曲に忠実なものだった。ハッタリをかまさずとも十分色彩的な音楽。

オリヴァー・ナッセン、只者ではない。B定期も本当に楽しみである!(という文をB定期の休憩中に書いているのは内緒)