2015/9/27
NHK交響楽団 第1816回定期公演 Aプログラム
@NHKホール

ベートーヴェン:交響曲第2番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

ピアノ:ティル・フェルナー
管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:伊藤亮太郎
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット


ブロムシュテット御大、88歳にしてベートーヴェン・ツィクルス開始。第1シーズンはB定期で1・3、このA定期で2番という取り合わせだ。バンベルク響とN響で全曲を振り分け、3シーズンかけて完走するそうだが、その暁には90歳になっている翁。底知れぬヴェジタリアン・パワーにはただ絶句である。噂では10年近く先まで契約が決まっているとか、いないとか。ストコフスキーの現役最長記録はMr. Sと共に余裕で抜いてくれそうだ。

ブロム翁はブラームスでは16型の大編成かつ締まった音作りだったが、ベートーヴェンでは編成から切り詰める。協奏曲・交響曲ともに12型。若いヤマカズが16型倍管で初期交響曲をやる一方で、老匠がこのような形態をとるのだから音楽は面白い。あとは聴き手の度量の問題か。
全プロタクトを持たず、快活な手さばきで振り通したマエストロはとにかく細部まできっちり造形、わずかな弛緩も許さない引き締まったプロポーションのベートーヴェンを展開した。特に前半の第2番における徹底振りは鬼のようで、管楽器の明瞭な発音は翁の厳しい要求によるものだろう。一つ一つの声部がクリアに聴こえ、結果としてハーモニーが豊かに聴こえる。NHKホールでこれだけはっきりと聴こえる木管も珍しい。弦は人数が少ない分楽員一人あたりの負担が増え、鳴らす場面ではとにかく全力でガリガリと弾かせる。流麗さより原石のような新鮮さを 優先していたが、N響のアンサンブルは多少の負担では揺るがず、それでいていつもより前傾姿勢なので誠に素晴らしい。

後半の「皇帝」はウィーンのピアニスト・フェルナーを迎えての演奏。ブロムシュテットは手綱を弱めることはしないが、ソリストとの音楽の指向性の統一には流石に気を配っていた。フェルナーは重くないタッチで繊細な表情変化を全曲で聴かせる。エンペラーの威厳はほとんど感じられないが、気品ある姿には別の説得力が宿る。こういう路線で聴く第2楽章は絶品、「皇帝」 を好まない自分でも涙が出そうになった。ブロム翁は前半の精緻さはそのままに、曲に相応しい威厳あるバックを創出。ティンパニの乾いた打音は好みではないが、演奏のスタイルには合致していた。

もう一曲序曲があってもいいな、と思わないではないが―流石はブロム翁、充実感のある演奏会だった。 厳しくも愛のある指揮者とオーケストラのコラボレーションには時代を超えた魅力がある。