2015/10/18
日本フィルハーモニー交響楽団 第367回名曲コンサート
@サントリーホール

ブラームス:大学祝典序曲
リスト:ピアノ協奏曲第1番
ボロディン:交響曲第2番
~アンコール~
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」より レズギンカ

ピアノ:小川典子
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:扇谷泰朋
指揮:アレクサンドル・ラザレフ

日フィルと固い絆で結ばれた名匠―いや、名将ラザレフの登場。ショスタコーヴィチの9番をメインとする定期は聴けないため、一足早く行われた名曲コンサートを聴いた。これがもう、凄いのだ。「名曲コンサート」というタイトルから連想しがちなルーティン感は皆無、新鮮な驚きとたのしみに満ちていた。このシリーズ、なぜかあまり知名度が高くないようなので日フィルはもっと宣伝したほうがよいと思う。

ラザレフ将軍はいつものロシアン燕尾服ではなく黒シャツ姿で登場、16型のオケが待つステージに「ドシン!」と轟音を立てて駆け上がり、答礼もそこそこにブラームスを振り始める。この一挙手一投足から往年の大指揮者感が漂っていると感じるのは、自分だけではないだろう(笑)
この「大学祝典序曲」がのっけからラザレフが指揮台を踏み鳴らすほどの爆演で、ブラームスに珍しい鳴り物をこれでもかと叩かせて盛大に祝典気分を盛り上げる。ショスタコーヴィチかチャイコフスキーの祝典曲もかくや、というド派手さだが、ラザレフの指揮自体はファゴットをはじめとする木管群への適切な指示をはじめ、節度を保った正統的なもの。この真摯さとエネルギーの解放のバランスがラザレフの魅力を生んでいるのだろうか。

いつも通り終結間際でメガネを外して一曲目からドヤ顔フィニッシュを決めたラザレフ、次のリストでは14型に減らすもオケの分厚い鳴りは変わらず。ブラームス同様スコアは見ているもののオケへの指示は体が先に動いているという感じで抜け目なく鋭い。小川さんのソロは硬質なタッチで安定感があった。新鮮な魅力はそれほどでもなかったが、リストの協奏曲に相応しい華麗さは表出されていたと思う。ラザレフは全曲振り終えるや否や、どの聴衆よりも早く小川さんへ拍手を始めてしまった(笑)これではサントリーホールの「余韻を保って・・・」というアナウンスも面目なしだが、豪快なマエストロならではの珍事と言うべきだろう。

メインはやや短めだが、豪壮な迫力に満ちたボロディン「2番」とくれば文句はない。実際、この曲はこれほどまでに凄まじい力を秘めていたのかと驚嘆するような目覚ましい演奏だった。
再び16型に戻ったオケはラザレフの一振りでロシアの大地を彷彿とさせる轟音を轟かせ、その後のアクセントも実に土俗的で愉しい。ところが更に驚きだったのは、第1主題にティンパニが加わる箇所で急減速したこと。更に外連味が効いて痛快の一言だ。この急減速はこの後も何度か出現したが、音楽のフォルムごと移行しているので違和感や不適切な感じはしない。第2楽章は細かく刻むホルンに乗って弦のピッツィカートとフルートの明滅が美しいが、リズム的には少々難しい。ラザレフの迷いのない指示により後拍の処理もばっちりだった。第3楽章ではホルンのソロが快調、のびやかな旋律に入ると「どうだい?いい曲だろう?」と言わんばかりに体を半分客席に向けて楽しそうに振る将軍がお茶目。コントラバスの持続音から切れ目なく突入するフィナーレは打楽器群の猛打が続き、弦管も負けずに鳴らすのでもう音響の洪水。将軍はセカンドヴァイオリンに気合の声を上げながら渾身の指揮、やはり終結前にはメガネを外して最後の一音と同時に客席を振り返った。煽られた聴衆はワッと沸いて後は楽しいカーテンコール。豪放なラザレフ将軍は意気揚々とステージを練り歩き、各パート奏者を手厚く労う。

いやはや、これが定期の客席だったら更に興奮状態だったのではないか。客入りは比較的上々だったが、これこそもっと満員の客席であってほしかった。ラザレフ将軍は来月来日するフェドセーエフの先手を打ったのか、客席の拍手が収まらぬうちにスネアドラムに指示を出して「レズギンカ」を開始、これもロシアオケ顔負けの地鳴りを伴う演奏だった。いい演奏会だったが、このアンコールのおかげで更に印象深いものになったのは間違いない。