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November 08, 2015

2015/11/8 ハーディング/新日フィル ディーン、ブルックナー

2015/11/8
新日本フィルハーモニー交響楽団 第549回定期演奏会
@サントリーホール

ディーン:ドラマティス・ペルソネ(日本初演)
~ソリスト・アンコール~
Miles Davis: My Funny Valentine

ブルックナー:交響曲第7番
(ベンヤミン=グンナー・コールスによる2015年校訂版/日本初演)


トランペット:ホーカン・ハーデンベルガー
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:ダニエル・ハーディング

メッツマッハーとの両頭体制が終わり、実質シェフ扱いのハーディングと新日フィルの演奏会。昨夏ツィンマーマンのトランペット協奏曲「誰も知らない私の悩み」で圧倒的な演奏を聴かせたハーデンベルガーを伴っての登場である。

ディーンの「ドラマティス・ペルソネ」はハーデンベルガーに献呈され、ネルソンス/ボストン響との演奏でお披露目になった作品。表題のラテン語は英訳すると"persons of the drama"であり、「スーパーヒーローの転落」「独白」「偶発的革命」 という三楽章それぞれで別々の性格を演じ分けるソロ・トランペットに当てはめられている。
冒頭から打楽器による木質のチャカポコで始まり、すぐに管弦楽に飛び火してソロとのリズミカルな掛け合いへ発展する。大編成のオーケストラ、ソロ・トランペットともに特殊奏法含め全く休みどころの無い作品であり、練習はかなり困難を極めただろう。だが、その割に曲の魅力がダイレクトに伝わってこなかったのは曲の長さ(30分!)ゆえか?随所に興味深い響きは聴かれたものの、飽きてしまった。 
ハーデンベルガーのソロはアンコールの"My Funny Valentine"(昨年とは若干アレンジが異なった)共々圧巻というほか無く、昨年に引き続きほとんど呼吸のような自在さで歌われる。弱音からオケを軽々と超えて届く強奏まで、絶対的安定感を持つ最強のトランペッターだ。

後半のブルックナー7番。当初発表では一般的なノヴァーク版使用とのことだったが、演奏会近日になってベンヤミン=グンナー・コールスによる最新の校訂版が使用されると発表された。アーノンクール/WPhやラトル/BPhがブルックナー9番で彼の携わった楽譜により録音したのは、一部話題になった。なんでも、ブルックナーの自筆譜、ノヴァーク版、ハース版、改訂版それぞれの相違点を見直し、修正した結果が反映されているそうな。聴感上の違いはそれほど無いだろうと思っていたのだが、意外と少なくなかった。第1楽章第1主題が再度登場する箇所でホルンが飛び出すのは明確な違いだし、そのほかにもホルンが重ねられる箇所が増えている。詳細は分からないが第2楽章にも違いあり。第4楽章はテンポ変化が多く、ほぼノヴァーク版と同じ指示ということだろうか。
ハーディングが新日フィルでブルックナーを振るのは「8番」「5番」に引き続き3回目だと思うが、彼のブルックナーは先達アバドの影響がかなり大きいように思われる。第1楽章序盤でオーケストラが大きく膨れ上がり第3主題へ移行する箇所、コーダでアッチェレランドをかけるのは全く同じだ。その他にも、主題ごとにテンポに明快な差異をつける。それ自体は別段悪いことではないのだが、第2楽章第2主題のテンポ設定はあまりに性急で、楽譜指定のモデラートより速い。ハイドンのメヌエットのようにサラサラと奏されていくのは個人的に強い違和感があり、好みではなかった。以後は真っ当に進み、第4楽章のテンポ変化も先述の通りはっきりと付けられる。
新日フィルはスケール感に富んだ好演で、全曲ほぼ破綻無く演奏した。ただ明らかに演奏の足を引っ張っていたのはホルンの第1奏者で、根本的な問題があると思われる。原始霧の中から現れる冒頭はいきなり突出し、しかも管が壊れたような素っ頓狂なEの音。その後もセクションから乖離していたのは気になった。

ハーディング×新日フィルのコンビネーションにはいまいち心動かされることがないのだが、ブルックナーに関してはまずまずといったところだろうか。少なくとも前回の「5番」よりは遥かに仕上がりはよかった。来年の戦争レクイエムに期待がかかる。 

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takupon68 at 23:30│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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