2015/11/17
テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
~エル・システマ創設40周年記念~
@東京芸術劇場

R. シュトラウス: 交響詩「ドン・ファン」
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
~ソリスト・アンコール~
小曽根真:Reborn

R. シュトラウス: 交響詩「英雄の生涯」
~アンコール~
アブレウ:ティコティコ
ペレス・プラード:マンボ
バーンスタイン:ミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」より マンボ
ペドロ・エリアス・グティエレス:アルマ・ジャネラ

ピアノ:小曽根真
管弦楽:テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ・オブ・ヴェネズエラ
コンサートマスター:Lila Carolina Vivas Blanco
指揮:クリスティアン・バスケス

日本にも浸透しつつある音楽教育プロジェクト「エル・システマ」の母国から、ドゥダメル×シモン・ボリヴァル響の後釜と言うべき若武者たちがやってきた。率いるのはクリスティアン・バスケス。彼もまた、ドゥダメルやマテウスらに続き欧米でも活躍する若き指揮者だ。

彼らは、とにかく全編ひた押しに押して行く音楽を繰り広げた。22-20-16-14-12という巨大な弦5部の厚みは比類ないし、管楽器もほぼ4管編成だ。冒頭および後半のリヒャルト・シュトラウスでの音の渦は作曲家が聴いても仰天するだろう。それでいて、怒号のように耳を劈く音色ではなくてどことなく丸みを感じさせるのがまた佳い。(芸術劇場の音響も好作用しただろう)「英雄の生涯」でテンコ盛りの管楽器ソロもほぼパーフェクトで、シモン・ボリヴァルのメンバーより更に若年期から指導を受けているというテレサ・カレーニョのメンバーの素晴らしさを味わった。「ドン・ファン」「英雄の生涯」の両方で見事なソロを吹いたホルンの第1奏者は大したものだ。ただ、ヴァイオリン・ソロだけはやたらとクドく、協奏曲のカデンツァのように「自由」だった。
バスケスはこの血気盛んな若者たちのオーケストラを気負いなく統率、壮年期のアバドそっくりのしなやかな棒で全曲を描いていった。特に個性を発揮する場面はなく、強いて言えば「英雄の生涯」において「戦場」 の頂点で英雄動機の回帰に向けてテンポを落としていった点だろうか。オーケストラの音量が常にメゾ・フォルテより上なのは気になるが、これは仕方のない問題かもしれない。
余談だが、今世紀に入って急速にアバドのDNAを継ぐ指揮者が続出している気がする。それ自体は良いことだと思うが―。

なお、冒頭のラフマニノフ「パガニーニ狂詩曲」では例によって小曽根真が盛大に即興を盛り込んだソロを披露、若いオーケストラもそれにノリ良く応じており、一種のグルーヴ感が生まれていたのが印象的だった。小曽根さんはスタイルに捉われない良さがあるが、終演後の聴衆への語りかけを自ら英訳してオーケストラに伝えながら意思の疎通をアピール、数日前のパリでのテロ事件への追悼と超克の意を込めてアンコールを奏した。(なお、開演前にもオーケストラ・聴衆ともに黙祷を行った)

「英雄の生涯」の後には名物のド派手なアンコール尽くし、ヴェネズエラ・カラーのジャケットに早変わりしてお祭り騒ぎのオンパレードとなった。煽り、煽られ、ここまで来ると完全にライヴのノリだが、たまにはこういう演奏会も悪くない。終演は22時近くとなった。