2015/11/21
新日本フィルハーモニー交響楽団 第550回定期演奏会
@すみだトリフォニーホール

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番
~ソリスト・アンコール~
ジェローム・カーン(ステファン・プルーツマン編曲):All the Things You Are

ラフマニノフ:交響曲第2番

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮・ピアノ:レオン・フライシャー

かつて新日フィルと度々共演したというフライシャー、1998年以来久々の登場となった。セル/クリーヴランド管との一連の録音は愛聴するところだが、生演奏に接するのはピアニスト・指揮者いずれも初めて。

コントラバス下手のヴァイオリン両翼配置、ピアノはオーケストラと向き合う形でモーツァルトは演奏された。
御年87歳のフライシャーは流石に技術的に危うげな所が無いではないのだが、綻びすら愛したくなる切々とした音楽の運び。音楽の行間を親密に埋めていくNJPの弦も美しく、このオケにはこういうスタイルの音楽が案外向いているのかもしれないと思った。これぞ「大きな室内楽」。
アンコールは自らのアナウンスで「今日の演奏会で引退されるCb安保さんへ」と告げて、ジェローム・カーンの"All the Things You Are"を左手アレンジで。片手とは思えぬ表情の豊かさ、寛いだ素晴らしさは流石で、沁み渡る余韻を残した。

後半はラフマニノフの交響曲第2番で、オーケストラはぐっと拡大。フライシャーは椅子に腰掛けて振るが指揮姿は矍鑠としていた。
1時間を超える雄大なテンポで表現された楽曲は、綿々と歌われるロマンより透徹した美意識を感じるものだった。敢えて言えばシベリウスの静寂感すら感じたと言っても良い。こんな感触をラフマニノフの2番で得るとは全く予想外だったが、悠々自適としたフライシャーの音楽性なのだろうか。新日フィルはそんな意思を見事に音化しており、全セクションが共感に満ちた演奏をした。第3楽章のクラリネットソロなど木管群の息の長い歌をはじめ、遅めのテンポを停滞させずに聴かせてくれた。弦には時折立ち止まり思索するような抒情が浮かび、金管も華美よりは融け合ったサウンド。第4楽章の威容は輝かしく、どこか「喪われし時代」という言葉が脳裏をよぎったのは若きフライシャーが活躍した1960年代の音楽シーンが念頭にあったからだろうか。
セルやオーマンディが振った音楽をフライシャーが肌で感じていたということがよく分かる、愛すべきラフマニノフ2番であった。いつまでも記憶に留めたい温かな余韻を得て帰宅。