2015/11/25
≪東京二期会オペラ劇場公演≫
ヨハン・シュトラウス2世『ウィーン気質』 オペレッタ全3幕(日本語訳詞上演)
@日生劇場

J. シュトラウス2世:喜歌劇「ウィーン気質」(全3幕/日本語訳詞上演)

演出:荻田浩一
日本語訳詞:加賀清孝
ギンデルバッハ侯爵:小栗淳一(バリトン)
ツェドラウ伯爵:与儀巧(テノール)
伯爵夫人:塩田美奈子(ソプラノ)
フランツィスカ・カリアリ:醍醐園佳(ソプラノ)
カーグラー:米田毅彦(バリトン)
ペピ:守田由香(ソプラノ)
ヨーゼフ:升島唯博(テノール)
リージ:田中紗綾子(ソプラノ)
ローリ:山下千夏(メゾ・ソプラノ)
合唱:二期会合唱団(合唱指揮:安部克彦)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:阪哲朗

ウィーンのフォルクスオーパーで大晦日の「こうもり」を振るという、見方によっては小澤征爾のニューイヤーコンサート出演に匹敵する名誉を授かった阪哲朗が二期会の「ウィーン気質」を振る。日本語上演とあっても、これは行かないわけにはいかない。

シュトラウス2世が生前手がけた最後の作品であり、未完に終わったため弟子のミュラーの補筆により世に出た「ウィーン気質」。彼の名ワルツ・ポルカの連続で全体が構成されているため、必然的にオーケストラの充実が求められる。
その点で今回は素晴らしかった。阪哲朗は東フィルにウィーンの血を流し込み、饒舌に音楽を語らせていた。日本の楽団がシュトラウス一家の作品を演ると、とかく杓子定規な演奏になりがちである。2拍目をやや早めに踏み込む独特のリズムには前述した小澤征爾も苦しんだようだが、阪哲朗の指揮は実に鮮やか。意図的に作るというよりは嬉々として振っていたように見受けられた。ポロネーズ、ポルカ、ワルツと種類の異なる舞曲を適切に描き分けるその手腕は鮮やかで、適格な指揮と同じく小股の切れ上がった音楽が上演の質を高めていたといえる。

歌について。日本語上演の利点はセリフがダイレクトに伝わり、舞台で起こっている出来事がよりリアルでひときわ近いものとして感じられることだと思う。という訳で今回は左右の字幕は省かれていたが、意外と舞台から聴こえてくる日本語を識別するのに苦労する場面もあった。主役級の皆さんは総じて聴き取り易かったが、子音を最低限しか飛ばさない日本語の性質は場面によって管弦楽に押されてしまう。(それを含めてよく阪さんは手綱を引っ張っていて素晴らしかった)
具体的なキャストでは、ツェドラウ伯爵の与儀巧さんがズバ抜けて見事。底力ある高音に歯切れ良い発音—9月の読響トリスタンでも瞠目したが、次代を担う輝かしいテノールに大拍手!その他では伯爵夫人、フランツィ、ペピの女声お三方がそれぞれコケティッシュな魅力を振りまき、演技も細やかだった。

荻田浩一氏による演出は、比較的小規模な劇場の規模に見合ったものだった。元宝塚という氏のコンセプトは、良くも悪くもこの作品の親しみ易さを前面に押し出していた感がある。ステージ後方の大きな垂れ幕にはウィーンの宮廷を連想させるモティーフの数々(ハープ等の楽器、尖塔など)がパッチワーク的に並べられ、その前方で舞台が展開される。野外の場面や舞踏会のセットはいずれもやや丸みを帯び、シンプルだ。
全体的に、親しみやすい進行の中に潜んだハプスブルク帝国の多民族性、後の「ばらの騎士」を予見するような抒情の表出は試みられず、ミュージカル的なコミカルさが売りだったのだと思う。オペレッタの専売特許である時事ネタについては適度に盛り込まれていたが(「じぇじぇ!」「びっくりぽん!」)、「首相は仕事なんかしないのさ」というセリフについては皮肉として受け取ってよいのかしら?