2015/12/23
東京都交響楽団 都響スペシャル「第九」
@東京芸術劇場コンサートホール

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

ソプラノ:安藤赴美子
アルト:中島郁子
テノール:大槻孝志
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:二期会合唱団(合唱指揮:藤本淳也)
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉
指揮:エリアフ・インバル

今年の都響「第9」は首席客演指揮者のヤクブ・フルシャが指揮をとる予定だったが、彼のウィーン国立歌劇場デビューに伴い指揮者が変更となった。A定期はミヒャエル・ザンデルリングが担ったが、こちらは桂冠指揮者のエリアフ・インバルが登場。2007年、13年に続く3回目の都響「第9」登場となった。

インバルは前回と同じく、弦楽器は16型で木管は倍という大きめのオーケストラ編成をとり、楽譜はブライトコプフ社の旧版をベースとした。奇しくもこの前に聴いたパーヴォ・ヤルヴィ/N響もオーケストラ編成は全く同じだったので、興味深い聴き比べとなった。

冒頭から明晰に刻まれる2ndVn、それに続く1stVnも鋭利に入ってくる。そして全体が高まり第1主題が力感を伴って登場するが、インバルは十分にタメを作り激烈にトゥッティを導いた。大管弦楽の鳴りはすこぶる壮大で、分厚い響きが持続する。かといって鈍重にならず、各声部の明晰さは厳しく保たれているのがインバル流のサウンドだ。一聴すると王道を往く演奏に聴こえるのだが、内声の特異な抉り出しや鋭角的なリズムの強調、時折もたらされるペザンテなどがこの演奏を個性付けている。
特に特徴的なのは第1楽章結尾のホルン絶叫に率いられるトゥッティで、これは明らかにベートーヴェン以後の音楽—とくにブルックナーやマーラーにおけるカタストロフ―を予見したものだ。
 
スケルツォが終わるとインバルは一旦退出、その間に声楽陣とパーカッションが入場し、再開となる。第3楽章もこの指揮者特有の細を穿った演奏で、感傷に浸るというよりは彼のプレゼンテイション術に唸るといった趣。この楽章については、より表現が洗練された後日で項を割きたい。
終楽章では100名足らず・精鋭揃いの二期会合唱団がオケと拮抗し、優秀さを示した。甲斐さんのレチタティーヴォは世界水準の威厳で、最後の四重唱でも卓越した朗唱だった。他の御三方も好バランス。インバルから声楽へ送られる指示は比較的淡泊だったが、時折紅潮した顔で大きく振り、終結の猛烈なプレスティッシモではブルブルと両手を震わせて巨大なクレシェンドを繰り出した。

初日ゆえの齟齬も殆ど感じず、インバルと都響の関係がより一段階成熟したように感じられた「第9」であった。今回は3回の本番全てを聴いたので、残り2日は演奏の細かな変化について記したいと思う。

インバル/都響「第9」2日目
インバル/都響「第9」3日目(最終日)