2016/1/14
読売日本交響楽団 第554回定期演奏会
@サントリーホール

R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
リスト:ピアノ協奏曲第2番
~ソリスト・アンコール~
リスト:巡礼の年第1年「スイス」より ワレンシュタット湖畔で

ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」

ピアノ:フランチェスコ・ピエモンテージ
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:長原幸太
指揮:ミヒャエル・ボーダー

新春スペシャルの「新世界より」で充実の演奏を披露したボーダー×読響、薫り高いドイツ名曲を組み合わせての定期演奏会である。リヒャルト・シュトラウス、リスト、ツェムリンスキーという三者を通し、ヴァーグナーという巨大な影が見え隠れする好プログラム。音楽における「女性」とは何か、という問いも隠れキーワードであった。

冒頭「ドン・ファン」から目覚ましい快演!16型オケの誇る重厚さはそのままに、響きの透明感が通常比3割増しになった。ボーダーの指揮は細かいが嫌味でなく、フレーズの膨らみが豊か。ドイツの歌劇場で信頼を置かれている名匠の実力は確かだ。
リストのピアノ協奏曲第2番、ソロのピエモンテージはロマン派の協奏曲で名盤も残すピアニストだが、流石にタッチの選択から才能を感じる。マツーエフのような豪腕で叩き付ける路線ではなく、知的で洗練されたピアニズムだ。応じるオケも自信と風格に溢れ、リストの協奏曲とはこれほど面白い作品だったかと再認識する良い機会となった。ピエモンテージはアンコール「巡礼の年」で一層冴え渡る。

演奏機会が稀少なツェムリンスキー「人魚姫」は、哀しくも美しい叙情詩。(そもそも、スコアが発見されたのも最近らしい!)いわゆる「後期ロマン派要素」が満載で、ウィーンの爛熟と先達の影響もたっぷりと感じさせる。シェーンベルク「ペレアスとメリザンド」と同じ演奏会で初演された作品ということだが、確かに同時代の風を感じた。全3楽章、構成面ではやや弱いが、精緻な描写と豊麗な管弦楽の魅力には抗えない。前半のリヒャルト・シュトラウスと対比してしまうと少々分が悪いようにも感じるが、ウィーン版「シェエラザード」とでも呼ぶべき交響詩だ。第1楽章冒頭の黒々とした海の描写は詩的であり、また様々なミネラルを含んだリアルな海をも想起させる。人魚姫の悲哀は全曲の循環主題として表現され、ヴァイオリン・ソロをはじめ様々に受け継がれていく。こういった物語性を感じられたのも、ボーダー×読響の巧みな演奏があってのこと。実に豊かな一夜であった。