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May 16, 2016

2016/5/16 バッティストーニ/東フィル ヴェルディ、ロータ、レスピーギ

2016/5/16
東京フィルハーモニー交響楽団 第881回サントリー定期シリーズ
@サントリーホール 大ホール

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
ロータ:組曲「道」

レスピーギ:交響的印象「教会のステンドグラス」
~アンコール~
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:近藤薫
指揮:アンドレア・バッティストーニ
 


「イタリアのシンフォニックなレパートリーを開拓していきたい」と抱負を語ったバッティストーニ、今シーズンの初顔合わせはまさにその通りの味があるプログラムだ。イタリアが誇る管弦楽の名手を系譜的に並べ、更に宗教と社会の関わりまで透かしてみせる。流石は俊英だ。(もっとも、その体躯は今やヴェテランの風格を蓄えつつあるが・・・)ちなみに彼は軽井沢の大賀ホールではチャイコフスキー、清水和音の記念コンサートではブラームスの協奏曲を振っている。多様なレパートリーで聴かせてくれるだろう。

さて、初共演でも振った「ナブッコ」序曲。強弱の細やかなニュアンスや終局の畳み掛け等、鮮やかな音楽の運びは本邦で聴けるイタリア・オペラの最高レヴェルであろう。オーケストラもスネアドラムを伴う行進曲以降ぐっと引き締まった。

20世紀の巨匠ロータの「道」組曲は、アメリカのビッグバンド・ジャズの影響も濃厚な音楽。あのムーティがたくさんのレコーディングを残すのも納得がいく楽想の豊かさだ。沸き立つリズムに乗って登場するソロ群の明朗さ、特にトランペットは(この日全体を通して)軽やかな節回しがイタリア的で素晴らしい。明るさのみならず、旋律が纏う静けさも両立された。いい演奏で聴いてこそだろうが、ロータの曲はもっと演奏頻度が高くて良いはずだ。

後半は、レスピーギ「教会のステンドグラス」。何も「ローマ三部作」だけではないぞ、ということを伝えるような選曲だが、その「ローマ」で見事な演奏を成し遂げたこのコンビがそう力説するなら説得力があるというもの。教会旋法風の全音階や5度の響きで幻想的な音色を出しつつ、全体的には絢爛たる大管弦楽絵巻。第2曲で弦により奏される嵐の描写など、どこかシェエラザードのように聴こえなくもない。

だが、ここからが凄かった。アンコールに奏されたマスカーニの「カヴァレリア」間奏曲は本プロに勝る衝撃度で、オペラでこの先に起こる凄惨な悲劇を予告するかのような引きつったアクセントの連続に鳥肌が立った。弦の悲痛な鳴りっぷりも圧巻で、まさにこういう演奏が聴きたかったのだ。バッティストーニ、流石の見識だ。次回の「あやめ」が俄然楽しみになった。


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takupon68 at 22:30│Comments(0)TrackBack(0)公演評 

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