2016/5/21
NHK交響楽団 第1836回 定期公演 Cプログラム
@NHKホール

カリンニコフ:交響曲第1番
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:篠崎史紀
指揮:ネーメ・ヤルヴィ
 
音楽界を席巻するヤルヴィ一家のボス、ネーメの登場である。以前イルジー・コウトの代役でN響に初登場した彼、その後R. シュトラウスの秘曲プログラムなども話題を呼んだ。今回のB・C定期客演では、カリンニコフ・プロコフィエフというスラヴ系の得意曲と併せ、ベートーヴェン、シューベルトというウィーンの音楽を聴かせる。後者はネーメと直接イメージが結びつかないだけに、興味がわくところだ。

学生オーケストラなどでは頻繁に取り上げられるものの、「準メジャー」曲には今一歩届かずといった感があるカリンニコフの「交響曲第1番」。実演を聴けるだけで感謝だが、演奏も良かった。速めのテンポに無理のない伸縮を付け、流れよく聴かせるネーメの流儀は健在。彼は「速い」ことがよく話題になるが、音楽の巧みな伸縮―
イェーテボリ響とのシベリウスを聴いても分かるように―が演奏の肝ではないかと思う。N響の音色の特性もあり、ロシアの嫋嫋たるロマンというよりは辛口淡麗な方向性のカリンニコフだ。ラザレフ/日フィルのロシア色全開、豪快な名演とは対照的だが、こちらもまた味わうべき演奏であった。終楽章では流石に音楽も大きく膨らむ。

後半のベートーヴェン「田園」は、管楽器こそ通常の2管だが16型の大編成をとった。いわゆる「懐かしい」演奏を想像したが、それだけに留まらぬ驚きの名演であった。第2楽章をはじめとして、大編成だからこそ可能となる最弱音―N響の弦が作る弱音は実に密で美しい―を創り、第4楽章の嵐ではここぞとばかりにオケを開放する。全曲における圧倒的なディナーミクは正に巨匠の至芸だ。フレーズの綾もかなり精妙に描かれ、それが作為的に聴こえない。これら全ての膨大な情報量を、パパ・ヤルヴィは最小限の所作でオーケストラに伝えていた。殆ど立っているだけのような場面もあるが、オーケストラはその瞬間に相応しいサウンドを鳴らす。終楽章では弦楽器に波のようなニュアンスを要求し、感興豊かな音楽を描いていた。これほど感動的な「田園」、そう聴けるものではなかろう。同曲の標題ではないが、まさに「喜ばしい感謝」あるのみだ。N響の共感度も高かったし、第3楽章だったか、この音しかあり得ない!という打音を鳴らした植松さんのティンパニは震えるほど見事だった。