2016/5/22
東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.368
@サントリーホール 大ホール

シベリウス:「カレリア」組曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
ノルウェー民謡より "VESLE-FRIKK"

ラフマニノフ:交響的舞曲

ヴァイオリン:ヴィルデ・フラング
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:山本友重
指揮:クリスチャン・ヤルヴィ 

先日の定期に続きクリスチャン・ヤルヴィ登場。ペルト&ライヒという鮮烈なプログラムに対して、こちらは名曲プログラムだ。とはいえ、北欧(シベリウス)・アメリカ(ラフマニノフ)というクリスチャンのキーワードも見え隠れする。メンデルスゾーンでソロを弾いたヴィルデ・フラングはノルウェー出身、今月ノルウェーで開催されたベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートでメンデルスゾーンを弾いて同オケデビューを果たし、その成果を持って都響へやってきたことになる。

この日の都響はトランペット、コントラバスに首席2人を擁し、ヴィオラは店村さんとかなり充実した布陣。そこから生まれる音は都響サウンドの最上級成分であった。精緻さ&機動力&重量感を鼎立した音響は、ミニBPhの感すらある―決して言い過ぎではないと思う。都響のコントラバスはベルリン・フィルの伝統を汲んでいるとも言うし。
シベリウス「カレリア」組曲の冒頭から、金管の遠近感が快調だ。ホルンは良い意味で霧がかかったような音色、音楽が活発に動き出すと、それからはクリスチャンの指揮がモノを言う。北欧風味は殆どなく、アメリカンな明朗さで奏でられた「行進曲風に」も悪くない。オーケストラの鳴りは痛快、この後のラフマニノフが楽しみになる。

続いて、ヴィルデ・フラングがソロを弾いたメンデルスゾーン。彼女のスタイルはある種独特で、細かなヴィブラート(声楽の例だが、コジェナーのような)やアゴーギクを駆使して歌っていく。奔放といえばそうなのだが、表情には柔らかさが常に保たれているのが魅力だ。装飾的な花柄が美しいドレスを纏った姿は、いかにも北欧の妖精といった趣。彼女の自在な独奏にヤルヴィも巧く付け、かつ適度に主張するなどバランスを保っていた。
アンコールはノルウェー民謡から、不思議な調律によりハーディングフェーレのような雰囲気がホールに充ちる。先月の「ペール・ギュント」を思い出した。

後半はラフマニノフ最後の傑作「交響的舞曲」。終演後SNSの感想は賛否両論だったが、個人的には非常に好感を持った。少なくとも、この曲の実演としてはかなり上位に入る見事な演奏ではないか。第2楽章の粘り気あるジプシー風味、両端楽章の斬れ味抜群のトゥッティなど、随所でクリスチャンが都響に火を付けた。冒頭楽章でメロウなソロを吹いたSaxの上野耕平さんもたまらない。メンデルスゾーン以外は暗譜で振った彼、指揮は妖しいラッパー感満載だが並大抵のリズム感覚ではない。足をも使った鋭敏なキュー、バーンスタインばりの(きっと影響も受けているのだろう)ジャンプなど、パフォーマンスにも見える彼の動作は、恐らくは音楽的必然である。ステージ横の席で注視すればそれは明らかだった。都響は冒頭で述べた通り最善の充実度だったが、演奏後に感謝して周るクリスチャンに対し今ひとつ冷たい反応だったのが気の毒だ。良い演奏だったのだが、内実は分からないということだろうか。