2016/5/31
読売日本交響楽団 第592回サントリーホール名曲シリーズ
@サントリーホール 大ホール

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
〜ソリスト・アンコール〜
J. S. バッハ :無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番より 第1楽章

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」より
〜アンコール〜
プロコフィエフ :歌劇「3つのオレンジへの恋」より 行進曲

ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:日下紗矢子
指揮:キリル・カラビッツ
 
この日の呼び物はムローヴァ独奏のシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」だったろう。何せこのプログラムで3公演組まれているのだから。今回の来日でムローヴァは、読響との共演に加えて無伴奏リサイタルを行ったようだ。

そんな(どんな?)ムローヴァの弾くシベリウス、冒頭弦の弱奏に続いて滑らかなサウンドが沁み渡る。どこまでも広がる雪原に1人佇むような、禅にも通じる静けさを湛えた音が拡がる。決して音量は大きくないが、音の芯が非常にクリアで凛としている。演奏姿勢も長身痩躯をピンと糸が貫くようで、あたりを鎮める雰囲気も含めて剣の達人の技を目にするようだ。「ヴァイオリンの女王」という売り文句がチラシには記載されていたが、その言葉から連想させる艶やかさはない。敢えて言うなら氷の女王か。伴奏のオケはトゥッティで野性味溢れ、性格を異にする響きだった。これは前回カラビッツが振ったハチャトゥリアンの印象とも一致するので、彼の奔放さの表れだろう。ムローヴァのアンコール、バッハがこれまた澄徹。頻繁に演奏されるアンコールのバッハの中には、正直言って蛇足としか言えないものもあるが、このような演奏であればひれ伏すしかない。

そしてカラビッツ指揮による華やかなオーケストラ・ピース。冒頭のベルリオーズ「ローマの謝肉祭」から思い切り良い鳴らし方が見事で、2月に聴いた大野/都響の不感症的演奏にはない活力があり満足。後半、十八番のプロコフィエフ「ロメジュリ」では暗譜で縦横無尽に駆け巡る。日下さん率いる弦は統率の確かさとリスクを恐れぬ大胆さを併せ持ち、タイボルトの死の諧謔から墓前のロミオでの哀しみまで、パレット豊かな名演になった。3日連続公演の最終日で磨き込まれていたというのもあるだろうが、実に痛快でストーリーが眼前に浮かぶような演奏。アンコールの「3つのオレンジへの恋」も軽快で見事だった。カラビッツと読響の相性は良いと思われる。