2016/6/15
東京都交響楽団 第811回定期演奏会Cシリーズ
@東京芸術劇場 コンサートホール

モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」序曲
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

ピアノ:小山実稚恵
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉
指揮:大野和士
 
A/B定期に続く大野和士/都響の今シーズン第1弾。C定期ではヨーロッパからみたイスラームだ。近年キナ臭い話題が多く、日本のような特定の宗教色が強くない国から見ると「イスラーム=危険」というイメージを安易に抱きかねないが、この見方はとんでもなく間違っているし、それこそ危険だ。世界史上、イスラーム文明はヨーロッパよりも総じて先進的であり、ヨーロッパは多くの技術や叡智を彼らから学んだのだ。アラビア語文献を通してのギリシア思想の伝達や、数字、医術、挙げればキリがないだろう。レコンキスタや十字軍が「ヨーロッパ>イスラーム」のイメージを抱かせるのかもしれないが、よく双方の文化を見て学ぶ必要があると感じる。自分も恐ろしく勉強不足だ。

さて、本題に入りたい。モーツァルト「後宮からの誘拐」序曲から幕開けの愉悦が軽快、軽やかに弾ける鳴り物も心地よく響く。一転して中間部の淡い叙情にはしなやかな歌が自然と込められ、場面転換の嗅覚の鋭さにはオペラ指揮者としての大野さんを聴いた。

サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」は、恐ろしく腕達者なピアニストでもあった作曲家の技巧も楽しいが、随所に異国風の管楽器などがセンス良く散りばめられている。大野さんの盟友・小山実稚恵さんはまさに阿吽の呼吸、オケの燃焼も協奏曲の水準を超えて緩徐楽章など陰翳が濃い。第3楽章で弦は徐々に熱量を増していき、やがてはピアノ共々猛進となる。あざとさ満点、寧ろこうでなくては!

リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」は前半以上、もっと言えばA/B定期以上にこのコンビの将来的な可能性が垣間見えた好演。第2楽章の自在な木管は美しく明滅し、指揮者はオケと共に呼吸してさりげなく流れを示す。ソロの微妙な陰影に伴い有機的に膨らむ弦のピッツィカートも美しい。矢部さんのソロも精緻。派手に聴かせるタイプではないが、こういった表現が自然にできるオケ&指揮者はなかなかいないのではないか。両端楽章における荒々しく波打つ海の表現は、大野さんらしいフレーズの伸縮が見事だが、中間楽章の美しさを考えると更なる高みを求めたい。

総じてA/B定期より満足度の高い公演だった。曲も決して名曲プロではないが、平日なのに文字通り完売で驚いた。ヘロヘロのブラヴォーにはやや苦笑したが・・・平日マチネという新たな試み、まずは上々の滑り出しか。