2016/6/25
名古屋フィル+神奈川フィル スペシャル・ジョイントコンサート
@横浜みなとみらいホール 大ホール

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
~アンコール~
チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」より フィナーレ

ピアノ:菊池洋子
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:日比浩一(前半)、石田泰尚(後半)
指揮:川瀬賢太郎
 
昨年のシーズン発表時から楽しみにしていた特別企画・神奈川フィルと名古屋フィルのジョイント・コンサート。両オケでポストを持つ川瀬さんがいるからこそ成り立った企画だろうし、選曲もショスタコーヴィチ「レニングラード」と重量級で好ましい。実現に尽力された方々に心から感謝するばかりだ。

前半はモーツァルトのピアノ協奏曲第21番、合同オケのしっとりした質感に冒頭から耳をそばだてる。両オケの精鋭奏者による弦楽合奏はたいへん純度が高く、川瀬さんの懇切丁寧な指揮を先読みするような素早さもある。管楽器も軽やかに重なり、普段なかなか聴けない名フィルの名手の演奏にも酔った。菊池洋子さんの独奏は珠のように磨かれ、また絶妙に軽やかでまさに日本を代表するモーツァルト弾き(というより、日本人離れした感覚もお持ちである)だ。ピアノと管弦楽は徐々に融和し、すべてがプラス方向に作用した。ティンパニは少し表情に欠けた感もあるが。

休憩を挟み、いよいよショスタコーヴィチ「レニングラード」。20型の巨大編成は視覚的にまず圧巻、首都圏の中でも広めのステージがぎっしりと埋まる。ちなみに今回の編成はショスタコーヴィチの指定の範囲内とのことで、川瀬さんはその辺りも考えてこの曲を選んだのだろうか。自席はステージの横だったが、それでも爆音にならず意外にもクリア。「音量が大きい」ことは当たり前、その上で各パートをスムーズに浮き上がらせ、音楽の流れの明晰さを保った点に指揮者の手腕が出たのだと思う。冒頭の弦のトゥッティは思ったほどの厚みではなかったが、オーケストラの響きはみるみるうちに整い、力を蓄えていった。スネアの最弱音に始まる大きなクレッシェンドもリズムの切れがよく、ついに到達する阿鼻叫喚の大音響では待ってましたとばかりにスネア3台が圧巻の行進。神戸さんのティンパニも文字通り大暴れだ。(手首のスナップが効いた容赦ない猛打!)中間楽章では弱音の丹念な表現が活きる。途中の行進が際立ち、悲痛に響くのだ。そして、第4楽章では血飛沫そのもののバルトークPizz.に芯から震える。終結へ向けての長い積み重ねでも打ち震えるような呼吸感が共有され、やがて圧倒的なクライマックスへ至った。第1楽章の人間の動機の回帰は音量的にも凄まじく、全オーケストラが運命のリズムに乗りながら邁進して終結となった。

何という演奏だったことだろう。「レニングラード」が内包する深遠なテーマに対して指揮者・両オケが本気で取り組み、想像以上の果実が生まれた。今の時代にこそ響く凄絶さ、そして決して消えない希望の灯。神奈川フィルの奔放、名古屋フィルの実直が混成オケという形で見事にブレンドされ、熱き血潮に昇華した結果生まれた超名演であった。これほどの演奏の後になんとアンコール、チャイコスキー「白鳥の湖」のフィナーレ。こちらも濃かった! 白鳥どころかダチョウが跋扈するような大胆な演奏で、ソ連オケを思わせる迫力と音圧であった。
この日の記憶は長く留めておきたいもの。