2016/7/5
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第299回定期演奏会
@東京オペラシティ コンサートホール

ブルックナー:テ・デウム
ブルックナー:交響曲第9番

ソプラノ:安井陽子
メゾ・ソプラノ:増田弥生
テノール:福井敬
バリトン:清水那由太
合唱:東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮:藤丸祟浩)
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:戸澤哲夫
指揮:飯守泰次郎

イーモリ公×シティ・フィルのブルックナー・ツィクルス、最終作「第9番」でフィナーレ。4-9番のうち、6番以外が毎年一作ずつ演奏されたと記憶しているが、自分が聞けたのは後期の3曲だ。第7番が前プロのブラームスの合唱曲含め骨太な好演だったのはよく覚えている。

前半はやはりブルックナーで、「テ・デウム」。未完に終わった「第9番」の終楽章代わりとして演奏してくれ、というウィーン大学での講義における作曲家の言葉はともかくとして、ハ長調の弦のアーチ音型があの陶然たるアダージョ楽章のあとに始まるのは、自分は生理的に受け付けない。前半に演奏するなら、もちろん歓迎だ。冒頭は厳格に始まるかと思いきや意外にも柔らかく、しなやかな弦に続き合唱が入ってくる。オケの動きは戸澤コンマスに任せる部分が大きく、イーモリ公は全曲ほぼ歌いっぱなしの合唱を懇切丁寧に指揮していた。よく整った合唱は最後ソプラノのhiCも鮮やかで、独唱の4人も粒揃い。決して演奏機会の多くないこの曲だが、良い演奏で聴くとなかなか説得力がある。

後半の「交響曲第9番」。やはりツィクルスの総決算的な扱いなのか、万感胸に迫る演奏になった。第1楽章冒頭の管楽器の明滅の背後でうごめく低弦の上行が明晰に聴こえてくるなど、ヴァーグナー路線の延長だけではないイーモリ公の知的な構築も随所で感じた。とはいえ楷書の旨味、デモーニッシュな響きは現代の一般的なブルックナー演奏を大きく飛び越えた。各楽章の頂点の強奏に向けて音楽が強度を増していく過程、またクライマックスでの凄みは、往年のヨッフムにも通ずるものがある。(余談だが、ヨッフムのブルックナーは他のいわゆるブルックナー指揮者と言われる人々に比べるとかなり我流が強いように感じる。ブルックナー協会の会長まで務めた人だが)終楽章のホルンとヴァーグナー・テューバの幕引きや弦の美感など、棒の動き以上に指揮者の音楽性を感じ取ったオケにも大拍手。前回の第8番では先行楽章と終楽章の唐突な落差に当惑してしまったが、今回の第9番は見事な成果。高関時代になってシティ・フィルの演奏力が向上しているのは祝着だ。よい演奏会だった。