2016/7/8
日本フィルハーモニー交響楽団 第682回東京定期演奏会
@サントリーホール 大ホール

グラズノフ:バレエ音楽「四季」
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:扇谷泰朋
指揮:アレクサンドル・ラザレフ
 
先日の横浜定期に続き、ラザレフ/日フィルの集大成シリーズ。共同作業の一区切りに彼が選んだのは、ショスタコーヴィチの深遠な交響曲群の最後を飾る「第15番」。そして、前半のグラズノフは今後のシリーズの予告編という意味もある。ラザレフからインキネンへ、緩やかなバトンの受け渡しはオケにとってもきっとメリットが大きいはずだ。

グラズノフの「四季」。収穫の喜び高らかな「秋」こそ有名だが、全曲聴く機会は決して多くなかろう。聴いてみると実に雄弁、華やかな管弦楽の饗宴が耳に心地よい。チャイコフスキー的な淑やかさの冬で始まり、徐々に雪が融け自然が萌える様子まで見えてくる。各曲タイトルを念頭に置かずとも舞曲が楽しげ、ハープやクラリネットの艶やかなソロではラザレフが「良い曲(そして、良いオケ)だろう?」と言わんばかりに聴衆にドヤ顔でアピールしながら振る。終曲では当然このコンビならではの大爆発が訪れた。なお、ラザレフは慣習的にカットが行われる箇所も復元して演奏したらしい。

後半はショスタコーヴィチ「第15番」。近年ノット、インバルと充実した演奏が続くこの曲だが、そこにラザレフも重みのある一打を加えた。ハイティンクなどの演奏では謎めいた交響曲の神秘性がそこかしこから覗くような雰囲気があるが、ラザレフは徹頭徹尾正面突破。剛毅なコントラバスに支えられた弦五部は味濃く引き締まり、重要な打楽器群も鮮烈かつズシンと響く。管楽器のソロにはまだ改善の余地もあったろうが、各要素を完璧に描き分けるラザレフの手腕はこの難曲でも冴え渡る。終楽章の打楽器の持続の中で音楽は消えていくが、響きが消えても30秒近く保たれた沈黙も絶品。指揮者はこれまで同様、音が鳴り終わっても指揮を続けていた—。

以前アフタートークで、学生の頃第15番のリハーサルに立ち会ったとラザレフは語っていた。彼のショスタコーヴィチに感じる生々しい表情は、同時代の空気を吸った者にしかなし得ないものだったろう。今後も幸いにしてラザレフと日フィルの関係は続くし、ショスタコーヴィチも聴くことができる。円熟のラザレフに一層期待したい。