2016/8/27
NOVUS Quartet with Yeol Eum Son [Shostakovich]
@芸術の殿堂 コンサートホール(韓国、ソウル)

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第6番
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番

ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲

~アンコール~
ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第2番より ワルツ
ショスタコーヴィチ:バレエ音楽「黄金時代」組曲より ポルカ
ガヴリーリン:4手ピアノのためのスケッチより タランテラ
ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲より 第3楽章

弦楽四重奏:ノブース・クァルテット
第1ヴァイオリン:キム・ジェヨン
第2ヴァイオリン:キム・ヨンウク
ヴィオラ:イ・スンウォン
チェロ:ム・ウンフィ
ピアノ:ソン・ヨルム

今回のソウル滞在中の最終公演は室内楽。先日サントリーホールのチェンバーミュージックガーデンにも客演したノブース・クァルテットによるショスタコーヴィチである。後半のピアノ五重奏曲にはソン・ヨルムが客演した。
この公演のチケットは滞在中に芸術の殿堂のチケットセンターで買ったのだが、驚いたのは座席の埋まり方だ。ソウル・フィルやKBS響が5-6割しか埋められなかったコンサートホールを、ノブース・クァルテットはほぼ満員にしている。客層は若い女性が多く、なるほどイケメン弦楽四重奏団枠なのかと認識。しかし人気先行ではなく、素晴らしい技巧者集団だったので文句はない。

ショスタコーヴィチの第6番と第8番が置かれた前半は、淡々とした語り口と明確な形式感の中に作曲家の魂が浮遊するような前者・D-Es-C-Hの刻印明らかに激情が次々と立ち現れる後者の対比が狙いであろうか。ノブース・クァルテットの4人は音色の質が驚くほど似通っており、楽器の違いを感じさせないほどにどの音域でも滑らかな移行。ゆえに曲中で一つの声部が突出することがなく、とくに第6番は一つの線のように音楽が流れていった。ソロもとにかく巧く、幾分線は細めながら決して音の芯が弱まることがなく、弱音部でも弛緩は皆無で驚いた。表現一つ一つはひとまず置いて、音そのものが彼らほど徹底的に磨き抜かれた弦楽四重奏は久しぶりに聴いたかもしれない。第8番でもそれは健在で、精度だけとれば敵なしの感。トゥッティの鋭さは言うまでもない。

後半はソン・ヨルムをピアノに迎えての五重奏曲。(彼女の名前、どこかで聞いたと思ったら某佐村河内のソナタを弾いていた・・・)政情と結びつけて論が展開されがちなショスタコーヴィチの中では、この曲は比較的純粋に音楽の見事さを楽しめるように思う。冒頭の堂々たるピアノに4人の弦が返球し、力強く音楽が形作られていく。第2楽章のフーガや謎めいた第4-5楽章など、交響曲の「第8」「第15」のような空気感も漂う。これら緊張感の高い楽章においてもノブースの4人は音色の選択が精密で、無下に出される音は一つたりとも存在しない。全曲のアーチの中間にして頂点であるスケルツォは抜群のリズム感、変拍子や作曲家特有の急速なパッセージがことごとく決まってぐうの音も出ない。

微笑のようなフィナーレの後客席はしっかりと間を置いてから大喝采、ここから黄色い歓声を伴ってアンコール合戦となり華やいだ。30分とは行かないまでも4曲、かなり盛りだくさんだ。最初の2曲は思わずニヤリとしてしまうショスタコーヴィチの小品、編曲は勿論のことピッツィカートの諧謔やテンポの伸縮が楽しい。3曲目ではヨルムが上声部、そしてなんとヴィオラのスンウォンが下声部を担当して連弾。途中ご愛嬌もあったがかなりの腕前で驚いた。なおチェロのウンフィが譜めくり。最後は五重奏曲の輝かしいスケルツォでお開きとなった。
終演後はサイン会だが、これはもうアイドルのファンイヴェントに近い殺到ぶり。なかなか日本では見かけない現象で、大変興味深かった。無論、演奏が高水準であればこそである。