2016/9/10
日本フィルハーモニー交響楽団 第320回横浜定期演奏会
@横浜みなとみらいホール 大ホール

メンデルスゾーン:オラトリオ「エリヤ」

ソプラノ:半田美和子
アルト:手嶋眞佐子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
ボーイソプラノ:野沢晴海(NHK東京児童合唱団)
ソプラノI:盛田麻央
ソプラノII:高原亜希子
アルトI:小泉詠子
アルトII:池端歩
テノールI:田口昌範
テノールII:北嶋信也
バスI:浅井隆仁
バスII:石井一也
合唱:日本フィルハーモニー協会合唱団(合唱指揮:浅井隆仁)
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:扇谷泰朋
指揮:大井剛史
 
日フィルの横浜定期にて、メンデルスゾーン「エリヤ」を聴く。全2部構成、いずれも65分という長大な作品であり、なかなか実演で耳にする機会は多くない。旧約聖書における預言者であるエリヤは、ユダヤ教においても大きな存在であり、改宗ユダヤ人であったメンデルスゾーンにとっても彼を題材にとることは一際重要な意味を持ったに違いない。
第1部では、イスラエルにおける異教の神バアル信仰に怒った神ヤハウェがもたらした干ばつの中、預言者エリヤがバアルの預言者と対決して勝利。3年ぶりに恵雨が降る場面までが描かれる。第2部では、バアル信仰をもたらした妃イゼベルがエリヤを反逆者とし、聴衆(合唱)は煽られてエリヤを糾弾する。荒野に逃れ、神の山に導かれたエリヤは天変地異の末神と対面、嵐の中昇天する。幕切れではキリストの最後の審判が預言され、エリヤの正しさと神の栄光が歌われて終わる。

大井剛史指揮の日フィルはしっとりと聴かせてくれた。もともと派手な曲ではないので(第1部のバアルの預言者との闘いなど、内容的には過激なのに!)、音響的には渋い楽想が続くのだが、その中にあってよく弦が語る演奏であまり飽きがこなかった。管楽器の音色もいつになく艶消し気味で、よく溶けあった。そして、「エリヤ」独特の要求である大世帯のソリストの采配。一部は合唱にも参加し、時折浮き出て重唱を聴かせるという割り振りだが、今回の重唱組の方は皆実力・名声ともにしている方ばかり。単独ソロの方々では甲斐さん、望月さんあたりが頻繁に登場するが、特に甲斐さんの安定した美声は相変わらずである。
合唱は大編成で、大井さんの丁寧な指揮(圧倒的に合唱寄り)によってまとまりの良さを聴かせた。欲を言えばドイツ語の子音の切りなど細かな点は気になったが、まずまずの出来では。

全曲で最も輝かしい瞬間は、山を降りたエリヤと従者の子供(児童のソリスト)が歌い交わし、オルガンと合唱を伴い到達する第1部の終結部だった。ここでの大井さんの指揮は、ことさら音楽を力ませることなく、自然でふわりとした響きを全体的に作り出す。第2部でも同様で、いささか呆気ないようにも感じられたが、後々振り返ると全曲のバランスのためだったのだろうと思う。いい演奏だった。