2016/10/21
日本フィルハーモニー交響楽団 第684回定期演奏会
@サントリーホール 大ホール

ハイドン:交響曲第43番「マーキュリー」
ベートーヴェン:交響曲第4番

シューベルト:交響曲第4番「悲劇的」

管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:千葉清加
指揮:鈴木秀美
 
鈴木秀美さんが客演した日フィル定期を聴く。鈴木兄弟・親子(兄は雅明さん、雅明氏の息子さんが優人さん)は次々にモダン・オケを振っているが、特に秀美さんはここ数年首都圏の各オケでベートーヴェンの交響曲を含むプログラムをよく指揮している。昨年神奈川フィルで「第5番」、今年「第6番」、来年末は「第9番」。また新日本フィルでも春に「第1番」を聴いた。読響の来季客演では「第7番」だ。このままだと首都圏オケでツィクルスを達成しそうな勢いだが、その辺りご本人も意識してらっしゃるのか。

オーケストラは12型でヴァイオリンを両翼に分け、コントラバス4本は舞台中央奥に一列に並ぶ。
一曲目はリベラ・クラシカでもよく取り上げるレパートリーであるハイドンから、第43番「マーキュリー」。冒頭の第一音から、予想に大きく反して厚みのある芳醇な音が薫り立つ。ノン・ヴィブラートではあるのだが、普段のこのオーケストラの音を知る身としては驚くほど芯の太い音が全体的に鳴っている。特にヴァイオリンの音は全く違う。ラザレフが振った時以外は薄く感じていた日フィルの弦が、揚々と歌い、各声部が主張している。細部各所に隠し味的な要素も潜んでいた。第1楽章の結尾、秀美さんが両手で大きく楽想の転換を示すと音楽の表情がブンブンと揺れた。

トランペットとティンパニが加わり、木管も増えてベートーヴェンの「第4番」。秀美さんはここから棒を持つ。こちらはハイドンより更に過激で痛快、引き締まった両端楽章のテンポは演奏者には大変だろう。スポーティに洗練された表情ではなく、弦も管も最大に主張しながら進めていくことで楽曲の革新性を顕わにしたか。ヴィブラートは部分的に使用されるがごくわずか。ハイテンポゆえ第1ヴァイオリンや木管の各所には危ういところもあったが、非常に刺激的なベートーヴェン演奏で大変愉しんだ。

休憩を挟みシューベルトの第4番「悲劇的」。 冒頭から前半にも増して重心の低い響きに驚く。しかもそれは鈍いものではなく、オーケストラ全体をきれいに洗濯したような見通しのよいサウンドが基調となっている。主部の疾風怒濤は鬼気迫り、聴く側もまったく気が抜けない。過激だ。メヌエットではヘミオラの面白さを堪能し、終楽章も弦のフレージングの要求水準が高く、短調から長調への転換も明快で抜かりない。和音構成の面白さをパートの強調で示す場面も多々あるのだが、決してそれが目的化していない。雄弁な音楽と表裏一体であり、寧ろ相互補完的な関係にあるのも最高ではないか。この曲ではヴィブラートもかなり用いられていた。

ハイドン→ベートーヴェン→シューベルトと、交響曲の歴史を丁寧にたどるプログラム。その形式の発展とともに演奏様式も進化したことを、ややメインストリームからは外れた名曲たちで提示してくれた。何より、日本フィルの音がラザレフ、インキネン、ヤマカズらの主要指揮者陣とは全く違った清新さで響いたことがうれしい。このオーケストラの一つの可能性を垣間見た演奏会であった。冒頭の話に戻ると、在京オケ各団はそれぞれこのアハ体験を愉しんでいるということだろう。