2017/1/10
東京都交響楽団 第823回定期演奏会Bシリーズ
@サントリーホール 大ホール

ブルックナー:交響曲第5番(ノヴァーク版)

管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:四方恭子
指揮:小泉和裕

2017年の在京オケ定期第一弾は、都響。昨年はちょうどこの時期の演奏会が都響第800回定期の節目にあたり、やはり小泉さんの指揮でR. シュトラウス「家庭交響曲」が演奏された(その際の感想はこちら)。期待が大きかっただけにかなり落胆したというのが偽らざる思いだったが、果たして今回はどうか。

3日の文化会館ニューイヤーを挟んだとはいえ、新年明けていきなりブルックナーの「交響曲第5番」一本勝負というのはオケの楽員の方々にとってかなり負担のように思えるが、一気に正月ボケが吹き飛ぶという要素もあろうか。事実、指揮者・オケ双方とも気合の入った演奏ではあった。
第1楽章冒頭の低弦のピッツィカートからこのオケらしいマットな質感で、深遠な曲の世界に聴くものを誘う。続いて立ち昇るオケのトゥッティはストレートな響きで、膨らみや伸びというよりは鋭く内に凝縮した音だ。こういった音の広がりや金管のフレーズの取り方などは決定的に欧米系のオケとは違った点で、体格の差などにも起因しよう。良い悪いの問題ではなくお国柄とでもいうべきもの。
ただ、この日の都響は各セクション単位ではまったく悪くないプレイをしているのに、オケが一体となって音楽を生み出すという一体感が決定的に欠けていたように思える。普段チームプレイの極致のような音を聴かせるオケが、一体どうしたことだろう。多くの奏者が防府音楽祭で東京を離れていて、エキストラが多かったためか?(エキストラの多少と演奏のクォリティの相互関係には、自分は若干懐疑的なのだが・・・)例えば、金管は終始国内オケの水準を超えた安定した吹奏と立体感で、1番トロンボーンとテューバに読響の方を配したことによる音色の統一性なども申し分なかった。ホルンも最近のこのオケとしては十全に近い出来。木管はオーボエのトップの方が不調のようで心配だったが。弦も前述した低弦はじめしなやかな響きで、緩徐楽章ではコンマス四方さんの細かな気配りも感じられた。しかし、オケとしては音楽が乖離していたように思えたのだ―こうなると、指揮者の問題なのか。小泉さんのブルックナーは以前都響で振った「第1番」「第2番」同様に停滞とは無縁、淡々とした運びが特徴的だ。初期交響曲で静かな凄みに繋がった彼の実直さが、中期の「第5番」ではスケールを狭めることになったとすら思える。指揮を見ていると、第4楽章の二重フーガで大きく2つになった以外は殆ど4つ振りだったが、聴感上は窮屈さの原因になっていたかもしれない。緩徐楽章は都響の弦が味わい深い響きを出しているが、音楽はひたすらに進む。

とはいえ、ブルックナーの「第5番」という、彼の交響曲の中でも異色の位置を占める作品の魅力は感じられた。第4楽章における先行楽章の主題提示・二重フーガなど、どう考えてもベートーヴェン「第9番」へのオマージュであり、その厳格な構築性にはブルックナーの決然たる意志も宿っている。それだけに、一層大きな伽藍を聴きたかったというのが正直なところだ。小泉さんは終演後熱心な聴衆に呼び戻されていたが、自分は賛同できなかった。3月には手兵・名フィルとの「第8番」を現地で聴くことにしているが、先入観を排して耳を傾けたいと思う。