2017/1/18
—セイジ・オザワ 松本フェスティバル 特別公演—
サイトウ・キネン・オーケストラ ブラス・アンサンブル 東京公演
@紀尾井ホール

ヘンデル:「王宮の花火の音楽」より 序曲
(高橋敦、竹島悟史編曲)
プレトリウス:テレプシコーレ舞曲集より
(アルフレッド・ラウス・リンハルト/高橋敦、竹島悟史編曲)
J. S. バッハ:「御身が共にいるならば」 BWV508
アルフレッド・ラウス・リンハルト編曲)
モーツァルト:ホルン協奏曲第3番 K.447 より第3楽章
(ゲイリー・スレチタ編曲)

ヴァーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より 第1幕への前奏曲
(高橋敦、竹島悟史編曲)
ミロシュ・ボク:金管楽器とティンパニのための3つのイントラーダ(日本初演)

J. ウィリアムズ:オリンピックファンファーレとテーマ

ジョー・ガーランド:イン・ザ・ムード

グレン・ミラー:ムーンライト・セレナーデ
(高橋敦、竹島悟史編曲)
メンケン:映画「アラジン」より ホール・ニュー・ワールド
(和田薫、竹島悟史編曲)
アイルランド民謡:ロンドンデリーの歌
(パーシー・グレインジャー/高橋敦、竹島悟史編曲)
J. ウィリアムズ:スペシャル・セレクション
(高橋敦、竹島悟史編曲)

~アンコール~
エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
ヘイゼル:「3匹の猫」より ミスター・ジャムズ
J. ウィリアムズ:スペシャル・セレクションより レイダース・マーチ

サイトウ・キネン・オーケストラ ブラス・アンサンブル
トランペット:ガボール・タルコヴィ、カール・ゾードル、高橋敦、服部孝也
ホルン:ラデク・バボラーク、阿部麿、勝俣泰
トロンボーン:ワルター・フォーグルマイヤー、呉信一
バス・トロンボーン:ヨハン・シュトレッカー
テューバ:ピーター・リンク
ティンパニ&パーカッション:竹島悟史

毎夏松本に集結してヴィルトゥオーゾぶりを見せつけているサイトウ・キネン・オーケストラを支える、ブラスセクションが単体で特別公演を開催。これまでも松本ではブラス・アンサンブルの演奏会がもたれていたようだが、東京や他地域を回るのは初めてのことだ。何せメンバーが凄い。現役&元ベルリン・フィルの名手であるタルコヴィとバボラークを筆頭に、ウィーン・フィルのシュトレッカーなども加わる。メンバーが流動的なフェスティヴァル・オケというのはルツェルンなど他の音楽祭と同様だが、今回のメンバーはほぼ毎年顔を揃える中心メンバーだ。このクラスの奏者が一堂に会するというのはやはり小澤総監督の力なのだろう。

前半にはチェコの現代作曲家であるミロシュ・ボク作品、後半にはアイルランド民謡である「ロンドンデリーの歌」が加わるため一概には言えないが、前半はドイツ・オーストリア系統のクラシック作品、後半はアメリカ寄りの肩肘張らない名曲集といった趣だろうか。実際、ステージの雰囲気含めそのように色分けがなされていたように思う。
一曲目のヘンデル「王宮の花火の音楽」序曲から全音域にわたって柔らかな音色が美しい。続くプレトリウス「テレプシコーレ舞曲集」は管楽アンサンブルには馴染み深い曲だと聴くが、実に素朴にして管楽器の魅力を楽しめる曲集。バロックの旋律の裏でリズムを愉しげに叩く竹島さんの太鼓もセンスの塊だ。バッハに続いたモーツァルトの協奏曲では、最近水戸室内管と全集も出したバボラークの卓越したソロが聴けた。そして「マイスタージンガー」前奏曲は普段彼らがオケで活躍する奏者だということを再認識させる厚みあるサウンド。より明るい響きも作れるのだろうが、内に凝縮した底光りする響きを独墺オケの奏者が主導して作っていた。その特徴がより出たのは前半最後のボク作品。バボラークがオクタヴィア・レコードに入れたCDでもその曲を聴くことができるが、純朴な宗教観を感じさせる作風だ。

後半は鮮烈なJ. ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレ」で幕開け。フルオケに匹敵、或いは凌駕する華やかさだ。続くジャズ・ナンバー二品はスウィング満載で、オケ奏者らしい生真面目さもあるにはあるがそれ以上にとにかく楽しい。途中現れるトランペットやトロンボーンのソロは、外国ならその都度指笛が飛んだかも。続く有名な「アラジン」では、肉声のようにメロウなタルコヴィのフリューゲル・ホルンが堪らない。呼吸を整える「ロンドンデリーの歌」に続いて、最後は垂涎のJ. ウィリアムズ名作選。「スーパーマン」「スター・ウォーズ」といったメジャー・ナンバーに紛れ、しっとりとした「JFK」があるのが心憎い。このセレクションでは勿論名手達の妙技が存分に発揮され、タルコヴィの針の穴を通すような超ハイトーンの連続には降参するしかない。

大喝采の中、一階中央で見守っていた小澤征爾総監督もメンバーを称えるため舞台へ。「威風堂々」第1番に始まり3曲がアンコールとして演奏されたが、最後の「レイダース・マーチ」の刻みが始まってからしばらくマイペースに譜面をパラパラとめくり、見つけたと思うとすぐさま超美音で吹き始めたバボラークには苦笑してしまった。この御仁、休暇で3週間と楽器に触れずとも、何事も無かったかのように吹けるとか。超人である。
サイトウ・キネンという妙技集団の一角を担う金管アンサンブルを十分満喫できた公演だった。響きが幾分無国籍的なのはオケの印象と一致するが、曲の性格に合わせてスタイルを一変させられるのは熟達の名手ゆえなのだろう。編曲・多種にわたるパーカッションと大活躍だった竹島さんの裏MVPぶりも決して忘れてはならない。