2017/1/23
東京都交響楽団 第824回定期演奏会Aシリーズ
@東京文化会館 大ホール

ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
~アンコール~
ヴィエニャフスキ:7つのエチュード・カプリースより 第4番

グラズノフ:交響曲第5番

ヴァイオリン:ヨシフ・イワノフ
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉
指揮:小泉和裕

今年初めの都響A定期は、先日のB定期に続いて小泉さんの指揮。得意とするグラズノフ作品をメインとしたプログラムを聴いた。小泉さんのグラズノフを聴くのはこの演奏会以来だが、各地のオケで度々取り上げておられるレパートリー。「交響曲第5番」自体はラザレフ/日フィルの演奏会(名演だった!)で聴いた。

プログラム一曲目のウェーバー「オイリアンテ」序曲は、第一音から寸分乱れぬオケの響きに圧倒される。以前、インバル指揮で「ルスランとリュドミラ」序曲を聴いた時にも冒頭の響きの気合に圧倒されたが、それ以来の「おっ!」という感触だった。こういう序曲が肩慣らしにならないのはこのオケの長所だと思う。都響創設時からのある作品で、オケの矜持すら感じられる素晴らしい演奏だった。小泉さんの質実な音楽運びも好作用したと思う。ちなみに弦の雄大な前奏に続いて管楽器が快活に出す第1主題はB-durで、後半の交響曲と調性を同じくする。

続いては名作・チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」。都響で聴くのは7年前のインバルと神尾真由子さんの演奏以来となる。小泉さんの指揮は特にロシア色を感じるものではなく淡々と進んでいくが、ソリストの呼吸によく合わせていた。冒頭の弦のフレージングに少し甘さを混ぜたりと、オケの丁寧さも感じる。ヨシフ・イワノフのソロは昨今珍しいほどに濃厚なロマン性を楽音にまとい、特に緩除楽章では濃厚なポルタメントやヴィブラートを交えながら歌う。それでいて両端楽章の技巧は申し分なく、一般的なフレージングとは敢えて表現を逆にする箇所―スタッカートとテヌートの使い分けに顕著だった―もあって興味深かった。アンコールのヴィエニャフスキも洒脱に愉しませてくれた。

後半のグラズノフ「交響曲第5番」は、小泉さん×都響という長年来のコンビの良さが至る所で発揮された好演。名旋律の宝庫ながら奇想曲ふうで、交響的なまとまりはやや希薄に感じられるこの作品を統一的に聴かせる手腕には唸った。昨年聴いたラザレフの豪演は濃厚なロシア音楽としての側面を前面に出し、熱く雄渾な歌が全編で流れていたが―今回の演奏は国民楽派としてのカラーは崩さぬものの、寧ろドイツ的で厳格な交響曲に感じられた。都響の重心の低いサウンドに加え、小泉さんが正面突破のアプローチを採ったからだろうか。終始丁寧な筆致で描かれたが、表現の白眉は第3楽章。管楽器の和音の積み上げに続き、弦楽器がたっぷりとヴィブラートをかけて歌い上げる旋律と憂いを帯びた金管のコラールが入れ替わる楽章だが、弦のうねりの濃さには特筆すべきものがあった。続く第4楽章は快速で始まり、オケが分厚さを保ちつつ更に加速して突入する展開部はシンコペーションのリズムが痛快。裏ではティンパニが第1主題のリズムを確かに刻んでいるが、それらの要素がきちんと聴き取れるのだから演奏精度の高さが分かるというもの。コーダも圧巻の迫力であった。

B定期では本調子ではなかったと思われる都響だが、同じB-durのグラズノフ「第5番」は文句のつけようがない演奏だった。上野の文化会館をこれだけ豊かに鳴らしきる国内オケはやはり彼らだけだろうし、サントリーホールや芸劇ではなく文化会館で聴く都響は、一番「素」の音のように感じる。